令和2年度に肺MRIによる肺結節スクリーニングの実現可能性について検証を進めた.検診受診者を対象として呼吸停止下および呼吸同期で肺MRIの撮像を行った.正常構造および肺結節描出能の定性的評価では,概して呼吸停止下撮像が呼吸同期撮像より優れていたが,一部の結節は呼吸同期撮像で呼吸停止下撮像より明瞭に描出された.肺結節については,充実性結節,すりガラス状結節のいずれにおいても,呼吸停止下撮像が呼吸同期撮像より優れていた.結論として,肺MRIによる肺結節スクリーニングは実現の可能性がある.呼吸停止下撮像が第一選択であり,時間に余裕があれば呼吸同期撮像を追加するのが望ましい. 令和3年度に結節スクリーニングのためのコンピュータ支援検出(computer-assisted detection,CADe)ソフトウェア開発に必要な2種類のデータセット(肺野・気管支領域データセット、肺結節データセット)を整備した. 令和4年度に上記肺野・気管支領域データセットを用いて肺野および気管支領域の自動抽出手法を開発した.境界面での肺野の誤抽出,肺門部での気管支の誤抽出が見られたものの,良好な領域抽出結果が得られた. また,令和4年度に,肺結節スクリーニングのためのCADeソフトウェアの開発を進めた.初期のCADeソフトウェアでは期待していたほどの肺結節検出能が得られず,学習症例数が不十分であるとの結論に達した.症例を追加し,改めて肺結節検出の学習を進めている. 派生的な研究として,検診受診者の胸部MRIで検出される胸水に関する研究を行った.胸部MRIで偶発的に検出される少量の胸水は高頻度に認められる生理的な所見であることが示された.
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