研究課題/領域番号 |
20K08046
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大久保 真樹 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10203738)
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研究分担者 |
成田 啓廣 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10770208)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | X線CT装置 / スライス感度分布(SSP) / 逐次近似再構成 / 空間分解能 / 変調伝達関数(MTF) |
研究実績の概要 |
X線CTにおける逐次近似再構成(iterative reconstruction:IR)法による画像(IR画像)の、体軸方向におけるスライス感度分布(slice sensitivity profile:SSP)の測定法の開発を行った。この考案法では、低コントラストの球体を撮像した画像を用いて、各スライス画像のスキャン平面における積分により得られた体軸方向のCT値プロファイルを用いてSSPを算出する。この算出過程において、得られたSSPからCT値プロファイルを計算し実際のプロファイルデータとの比較を行うことから、SSPの測定精度の評価(検証)も伴う手法といえる。まず、従来のフィルタ補正逆投影(filtered back-projection:FBP)法による再構成画像を用いた検討をした。すると、標準的な方法(コイン法)で測定したSSPと考案法によるSSPは非常に近い形状となり、それらの半値幅は一致する結果となった。次に、2機種のCT装置における異なるIRアルゴリズムであるiterative model reconstruction:IMR(Phlips社)およびadvanced modeled iterative reconstruction:ADMIRE(Siemens社)を用いて、スライス厚1 mmおよび2 mmの画像に考案法を適用した。その結果、いずれの条件においても得られたSSPから算出したCT値プロファイルが実際のプロファイルデータによく一致することが確認され、SSPの測定精度の高いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業期間の前半2年間(令和2、3年度)において、IR画像のSSP測定法の開発を予定していた。令和2年度にCT画像の生成理論に基づいてSSP測定アルゴリズムの基礎を構築し、SSP測定用ファントムの試作および基礎実験を行った。そして令和3年度にファントムの製作を完了し、SSP測定法の開発およびその検証を行い、考案法の妥当性を確認した。ただし、SSP測定用ファントムは、直径10 mmでコントラスト150 HUの1種類の球体を用いたものであった。SSP測定精度をより向上させるためには異なる大きさの球体についての検討が必要である。さらに、IR画像は空間分解能がコントラスト雑音比に依存することから、より濃度の低い球体を用いた場合におけるSSP測定精度についても検討する必要がある。低コントラストの球体を用いた場合にSSP測定精度が低下する際には、考案法の改良が必要となる可能性もある。 以上の理由から、現在までの進捗状況は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
米国医学物理学会(The American Association of Physicists in Medicine:AAPM)は、IR画像の標準的なSSP測定法として、低コントラスト円柱ファントムの端面(エッジ)を利用する方法“傾斜エッジ法”を提案している。この方法では、CT画像のスライス間隔よりも細かい間隔で体軸方向のエッジプロファイルをサンプリング(オーバーサンプリング)するために、円柱を体軸方向から約5°傾斜させて撮影を行う。しかし、その角度の妥当性、および設置角度による測定精度の低下については検討されていない。そこで、傾斜エッジ法における傾斜角度についての検討を行う。この検討では、今回考案したSSP測定法を用いる。考案法により得られたSSPを基準に、傾斜エッジ法により角度5°で得られたSSPの測定精度、さらに角度を変えた時の測定精度の変化について明らかにする予定である。考案法は球体を用いるためファントムの設置が容易であり、さらに得られたSSPの精度検証をも併せて行う方法である。この検討を通し、考案法がAAPMの推奨する傾斜エッジ法よりも優れたSSP測定法であることを明らかとし、研究の推進を図る。
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