研究課題/領域番号 |
20K08047
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
瀧 淳一 金沢大学, 医学系, 准教授 (10251927)
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研究分担者 |
小川 数馬 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (30347471)
柴 和弘 金沢大学, 学際科学実験センター, 教授 (40143929)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Sigma-1 receptor / myocardial infarction / reperfusion / ventricular remodeling / I-125-OI5V |
研究実績の概要 |
生体内でのSigma-1 receptor (Sig-1R) の発現分布を画像化するために、I-123, I-125で標識可能なSig-1Rに特異的な高い親和性を有するリガンドを作成した。もともとSig-1Rの発現が確認されている脳組織における検討を行い、開発したI-123, I-125標識OI5VがSig-1Rに特異的に結合し、画像化が可能であることを示すことができた。成果はIn vitro and in vivo evaluation of [125/123I]-2-[4-(2-iodophenyl) piperidino]cyclopentanol([125/123I]-OI5V) as a potential sigma-1 receptor ligand for SPECT. Annals of Nuclear Medicine (2021) 35:167-175.として発表した。このトレーサーをI-125で標識したI-125-OI5Vを用いて、ラット心筋の虚血再灌流モデルにおいてオートラジオグラフィでの集積を検討した結果、再灌流1日モデルでは集積を示さなかったが、3日モデルで虚血領域内に有意の集積を示し、対側非虚血部に対して虚血部全体の集積比率で1.88±0.06を示した。またSig-1R特異的な拮抗薬投与によるブロッキングスタディにて集積は1.89±0.20から1.13±0.18と有意に抑制され、Sig-1Rに特異的な集積トレーサであることが示された。 また、I-123で標識したI-123-OI5Vにて30分虚血再灌流モデルにてSPECT/CTを施行した結果、生体画像として心筋の血流低下部に一致したI-123-OI5Vの集積を示したため、経時的な生体画像による評価が可能となったことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しく開発した、I-125, I-123標識OI5VがSigma-1 receptorに特異的なトレーサであることが確認できたことで第一関門をクリアした。予定どおり、ラット心筋虚血再灌流モデルにおける、病態生理の研究を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、ラット心筋虚血再灌流モデルにおける心筋梗塞において、I-125標識Sig-1Rリガンドの集積に関して、オートラジオグラフィを用い継時的な集積分布を検討する。従来の検討から、虚血時間は30分、測定ポイントは再灌流後1、3、7、14日、1か月とする。その結果を見て20分程度の短い虚血時間のモデルでも検討し、それでも発現が増加するようであれば心筋壊死が起こらない程度の虚血時間(10分程度)の検討も追加予定とする。また発現の空間的分布に関しては、心筋血流製剤であるTl-201やTc-99m-MIBIの分布と比較し、心筋生存性と直接関連するか否かを検討する。 また梗塞後のC-14-methionineの集積で評価できるマクロファージを主体とする炎症細胞浸潤は左室リモデリングの重要な因子であることを以前の検討で示してきたが、その炎症性変化度とSig-1R発現の時間的空間的関連についても検討する。またI-125-RGDによる血管新生イメージングに関しては、この血管新生低下と左室リモデリンングの関連が他の研究者によって報告されており、angiogenesisとSig-1R発現との関連も可能であれば検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
血管新生を反映するトレーサのRGD標識と解析の必要性が低いと判断し、その部分の開発改善を見合わせたために一部研究費を使用しなかった。 次年度にはSigma-1 receptor関連の放射性医薬品の標識、動態解析を更に本格化するので、その費用として使用する予定である。
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