研究課題/領域番号 |
20K08047
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
瀧 淳一 金沢大学, 医学系, 准教授 (10251927)
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研究分担者 |
小川 数馬 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (30347471)
柴 和弘 金沢大学, 疾患モデル総合研究センター, 教授 (40143929) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Sigma-1 receptor / myocardial infarction / ischemia and reperfusion / ventricular remodeling / I-125 OI5V |
研究実績の概要 |
I-125で標識したSig-1Rに特異的な高い親和性を有するI-125-OI5Vを作成し、ラット30分虚血再灌流モデルを用いて、Sig-1Rの発現と病理組織学的関連を評価検討した。昨年までの同モデルにおけるI-125-OI5Vの虚血再灌流後の空間的分布と時間経過に伴う集積変化をCirc J 2021;85:2102-2108として発表したが、この結果に基づいてOI5Vの集積がどの様な組織病理学的所見に対応しているかを検討した。検討項目としては虚血再灌流3,7日後のモデルを用いて虚血部の心筋細胞のviability、炎症性細胞、特にマクロファージの浸潤状態(CD68による染色をマーカとした)との関連を精査した。 その結果、再灌流により再灌流によりサルベージされviabilityが比較的保たれた心筋とviabilityが低下した非サルベージ心筋の両方でOI5Vの集積を認めたが、後者での集積が強く、area at risk の非虚血部に対するOI5Vの集積比は心筋全体に対する非サルベージ部の面積割合と正の相関を示した。逆にOI5Vの集積比は心筋viabilityを反映するTl-201のarea at riskでの非虚血部に対する集積比と負の相関を示した。またマクロファージの浸潤領域との関連を検討した結果、浸潤領域内とそれに隣接する領域に一致した領域でOI5Vの集積を認めた。 このことから、OI5V集積すなわちSig-1R発現部は心筋viabilityが低下し、マクロファージ浸潤を示す心筋ダメージ部を反映すると考えられ、OI5Vは障害心筋の評価に有用なイメージング法であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しく開発した、I-125, I-123標識OI5Vを用いSigma-1 receptorの分布を、ラット心筋虚血再灌流モデルにおいて評価し、その病態生理との対応関係が明らかになってきた。虚血強度(虚血時間)との関連性、さらにはSigma-1 receptorに対する薬剤を用い病態がどのように変化するかの研究を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
虚血強度(虚血時間)と、Sigma-1 receptor発現の関連性を見るために10分、20分虚血再灌流モデルにおいてI-125-OI5Vの空間的経時的変化を検討する。I-125-OI5V, Tl-201, Tc-99m MIBIによる3核種オートラジオグラフィーを施行し心筋viabilityとマクロファージ浸潤との関連を検討する。さらにSigma-1 receptorに特異的なantagonist(MR309またはE-52,862)を用いて、虚血再灌流後の心筋保護に対する効果が得られるか否かを検討予定である。心機能に関しては虚血再灌流1日後から連日2-4週間 antagonistを投与し、経時的にTc-99m MIBIによる心電図同期心筋血流SPEECT/CTを施行し、左室駆出分画、左室サイズを測定する。病理学的にマクロファージ浸潤を評価し、その抑制状態を検討する。これらの変化と虚血再灌流3,7日後のSigma-1 receptor発現程度、すなわちOI5Vの集積程度と対比し、その集積から治療効果が予測できるかを検討予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた実験が、実験担当者のコロナ病棟勤務のため急遽中止せざるおえなくなった。そのためラット購入費と施設使用料の一部を次年度に繰り越した。
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