研究実績の概要 |
1. 昨年までの虚血再還流モデルの検討において、Sigma-1 receptor (Sig-1R)に特異的に高い親和性を有するI-125-OI5Vの集積、すなわちSig-1Rの発現部は、心筋viabilityが低下しマクロファージ浸潤を示す心筋ダメージ部を反映することを示した。そこで、Sig-1R が治療のターゲットになる可能性について検討した。20分虚血再還流ラットにおいてfluvoxamine (10μg/Kg/day)を2週間腹腔内投与し(F群)、心機能の改善の有無を対照群(C群)と比較検討した。F群では左室駆出分画(LVEF)は2週後に改善したが、C群では不変であった。4週後も同様の結果であった。従ってSig-1Rの刺激により心筋保護的治療効果が期待できることが示された。 2. I-125-OI5Vを用いて、ラットdoxorubicin心筋障害モデルにおけるSig-1Rの発現の変化を経時的に検討した。Doxorubicin 2mg/Kgを毎週投与する群と生食を投与する群に対して、3,5,7,8週後に心、肺、肝、腎、膵、骨格筋、血液、心筋のI-125-OI5V集積を組織カウントにより測定した。また同時期に心筋血流製剤であるTc-99m-MIBIを用いた心電図同期心筋SPECTによる心機能測定と心筋集積を測定した。左室容積はdoxorubicin投与開始5週後から拡大し始め、LVEFは7週後から低下し始めた。肺、肝、膵、骨格筋のOI5V集積は全経過において不変であったが、心筋と腎の集積は5週後から低下した。心筋のOI5VとMIBIの集積は良好な相関関係を示した(r2=0.8)。以上よりSig-1R発現をOI5Vイメージングによってモニターすることで、doxorubicinの心毒性によるLVEFの低下より早期に異常を検出することが可能であることが示された。
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