研究課題/領域番号 |
20K08052
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
宮川 正男 愛媛大学, 医学部附属病院, 教授 (90346685)
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研究分担者 |
川口 直人 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (40837259)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デジタルPET/CT / FDG |
研究実績の概要 |
2020年4月に半導体デジタルPET/CTシステムDiscovery MIが稼働した。従来型と比較して、光子感度、空間分解能、時間分解能が改善されており、小病変の検出能向上や撮影時間の短縮が得られる。自動呼吸同期や心電図同期撮影も可能である。本装置と従来型PET/CT(Discovery 600)を同一症例において比較し、病変検出能やstandard uptake value (SUV)など定量値の違いについて検討した。対象は、検査前に本人から文書による同意が得られFDG-PET/CTを施行した150症例。二つのPET撮影室は、隣接して配置され、二機種のPETを連続して撮影することが可能であった。新旧二機種の撮影順序はランダムに施行した。「半導体PET/CT装置による病変検出能およびFDG集積度についての検討」として愛媛大学附属病院臨床研究倫理審査委員会において採択された。 研究結果の一部は、第80回日本放射線医学総会:Kawaguchi N, Miyagawa M,et al. Direct comparison between silicon photomultiplier-based and conventional PET/CT in patients of breast cancer. 第18回アジア・オセアニア放射線科学会:Okada T, Miyagawa M,et al. Direct comparison between digital and conventional PET/CT for FDG uptake of lumbar enhancement of spinal cord.に採択され口演した。 また、生理的FDG心筋摂取の完全抑制を目的として、心サルコイドーシスなどの50症例を対象に低炭水化物食+長期絶食法を前処置とするデジタルPET/CT検査も施行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通常の腫瘍に対する全身デジタルFDG PET/CTは、同一症例での従来型との比較を150例実施した。画像参照モニタには研究費で購入したEIZO社製 MX315W型を用いた。FDGの集積度についてmaximum standard uptake value (SUVmax)およびtarget-to-background ratio (TBR)による定量評価を行ったが、特に15mm以下の小病変の検出感度の向上と、SUVmaxおよびTBRで評価したFDG集積定量値の上昇が確認できた。PET撮影により治療前病期が変更され、治療法が適切に変更される症例も存在した。 次に、心筋への生理的FDG集積の完全抑制を目的とした低炭水化物食+長期絶食法を前処置として採用して、心サルコイドーシスなど50症例を対象にデジタルFDG PET/CTを施行した。通常型と比べて分解能の向上した高精細な画像が得られた。64列CTを搭載しており、冠動脈カルシウムスコアの取得、および心筋遅延造影CTの撮影は可能であった。引き続き、CT冠動脈造影(CTA) とデジタルPETのfusion画像も試みたが、目標とする高精細なCTA撮影は困難だった。また、冠動脈周囲脂肪にFDGが集積する症例は、IgG4関連疾患などによる限られた病変に見られるのみで当初予想されたより頻度が低かった。 一方、高安動脈炎や巨細胞性動脈炎の症例において、大動脈や頚動脈など太い血管壁へFDG集積度の上昇、検出能の向上が顕著であった。これらよりやや細い中小動脈壁に炎症が起こる結節性動脈周囲炎においても従来型より検出能が優れていた。
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今後の研究の推進方策 |
冠動脈周囲脂肪にFDGの集積が亢進する症例は、心房細動やIgG4関連疾患などによる限られた病変に見られるのみで当初予想されたより頻度が低かった。原因として、やはり心筋の収縮拡張に伴う冠動脈の移動が考えられる。呼吸同期は自動ですべての症例で得られているので、解決法としてこれに心電図同期法を組み合わせた検査を今後試みる予定である。うまくいくようであれば、ステント留置例や心臓CTAですでにvulnerable plaqueが指摘されているような症例でFDGデジタルPET/CTを試行する。 一方、高安動脈炎や巨細胞性動脈炎などの比較的太い(動脈径 2-3cm、壁厚 5mm前後)血管壁へFDG集積度の上昇のみならず、やや細い(動脈径 8mm前後、壁厚 4mm前後)中小動脈壁に炎症が起こる結節性動脈周囲炎においても従来型より検出能の向上が顕著であった。活動性血管炎や心サルコイドーシスなどにより高集積を認められる症例においては、デジタルPET/CT装置の血管壁の分解能について、150例で得られた従来型PETの分解能と比較しつつ検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染症の蔓延により、FDGを用いた検査が計画通り施行できなかったため薬剤費が予定通り使用できなかった。また、計画していた国際学会への出張が不可能となり、リモート発表に差し替えたため、出張費が計画より過少となったため。来年度は学会出張および論文のオープンアクセスの費用などに使用する予定である。
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