研究課題/領域番号 |
20K08060
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
寺本 篤司 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (00513780)
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研究分担者 |
塚本 徹哉 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00236861)
今泉 和良 藤田医科大学, 医学部, 教授 (50362257)
齋藤 邦明 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (80262765)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 病理画像 / 人工知能 / 特発性間質性肺炎 |
研究実績の概要 |
肺疾患のひとつである間質性肺炎には100種類以上の原因の異なるものが含まれるが、その中でも原因不明の特発性間質性肺炎は国の難病にも指定されている。特発性間質性肺炎にもいくつかの病型が存在し、それぞれ適切な治療法が異なるため、早期かつ正確に診断を行う必要がある。診断にはCT検査や肺生検による病理検査が行われるが、鑑別には豊富な経験を要し、正確に診断できる医師は国内でも限られているのが現状である。ここで、もし人工知能等の自動解析技術により正確に病変が解析できれば、より正確かつ迅速に安定した診断が可能となる。そこで本研究では特発性間質性肺炎の診断を支援するため、健常あるいは高有病率疾患の膨大なデータを、希少な特発性間質性肺炎のデータに変換する技術を開発し、得られた画像を用いて特発性間質性肺炎の有無、病型、重症度、治療効果、予後など診断に有用な情報を得る手法を開発することを目的としている。2020年度は特発性間質性肺炎患者や、多有病率疾患患者のCT画像データを入手し、データベースの構築を進めた。そして特発性間質性肺炎の病巣の領域を抽出し、特発性間質性肺炎の病型(IPF、非IPF)を分類する人工知能技術を開発し、70%の鑑別成果移動を得た。2021年度は病理画像の処理に注目し、2020年度に構築したCT画像データベースと同一患者の病理標本を入手し、ホールスライドスキャナにてデジタル化を進めた。さらに標本内の肺炎領域を病理医によって抽出する作業を行い、人工知能による学習処理を行うための準備を行なった。研究成果発表として、2020年度に検討したCT画像による特発性間質性肺炎の鑑別診断に関する原著論文が医用画像情報学会に掲載された。また、北米放射線学会や国内学会にて同内容の報告を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、2020年度に実施できなかった病理画像の収集とスキャナによるデジタル画像の作成に注力した。分担研究者の協力の下、病理診断が行われた特発性間質性肺炎疑い患者のリストを作成し、それらの中から診断が確定している患者を24名分ピックアップした。24名の組織標本をホールスライドスキャナでスキャンし、デジタル画像をデータベース化した。ここで、収集した画像データは画素数が膨大であり現状の人工知能アルゴリズムでは処理できない。また、組織片の中には正常な肺組織と間質性肺炎の領域が混在しているという問題があった。そこで、次の処理を行なった。(1)全領域が含まれる画像に対して、人工知能で処理可能なサイズのパッチ画像を細かく切り出し、かつ組織が含まれないものを削除し、パッチ画像のデータベースを構築した。(2)病理医によって正常組織と異常組織を分類する作業を実施した。それには研究代表者が専用のアプリケーションを作成し、病理医が容易に領域指定できるように工夫した。これらの作業によって特発性間質性肺炎の病変を含む30000枚のパッチ画像データベースを構築することができ、人工知能による仮想患者データの生成や分類処理を行う準備が完了した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、2021年度に構築した病理画像データベースを用いた仮想患者データの生成や自動鑑別処理の検討を行う予定である。また、病理画像とCT画像を併用した仮想患者データの生成や鑑別処理についても検討を行い、学会や論文誌における成果報告を行うことを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の繰越金が多かったことが主な原因であるが、その他の理由としては、備品として導入予定であった機器の導入価格が想定していたよりも安価であったため次年度使用額が生じた。次年度は繰越額と合わせて成果発表等に活用したい。
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