研究課題/領域番号 |
20K08062
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
佐野 紘平 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (00546476)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セラノスティクス / イメージング / がん治療 / ポリマー |
研究実績の概要 |
生体適合水溶性ポリマーは、医薬品の可溶化剤等として臨床利用される一方で、それ自体ががん組織に集積性を示すか否かについては殆ど明らかにされておらず、未開拓の研究領域である。本研究では、①種々の分子構造的特徴を有する水溶性ポリマーが如何なる機構でがん組織内に取り込まれるか、また、その放射性標識体ががんの核医学診断用プローブになりうるかについて検証する。そこで得られた知見を基に、高いがん集積性を示す新規ポリマーの創出を目指す。また、②水溶性ポリマーが持つ熱応答凝集作用に着目し、熱をトリガーとしたがん組織へのポリマー送達量の改善ならびに、治療用放射性同位元素による標識体を用いる放射線療法用薬剤としての可能性を検証する。今年度は以下の結果を得た。 ①昨年度、側鎖にエチレングリコール(EG)鎖をブラシ状に配列した水溶性ポリマーであるポリオリゴエチレングリコールメタクリレート(POEGMA)誘導体が、がん組織に高く取り込まれることを見出したが、今年度は、ポリマー分子量および側鎖のEG鎖長がポリマーの細胞内取り込みおよび体内動態に与える影響について精査し、良好ながん集積性を示す最適な構造を見出すことができた。また、ポリオキサゾリン(POZ)の側鎖に葉酸誘導体およびシグナル素子を導入した薬剤を新たに合成し、これが腹膜に播種した卵巣がんを効率よく検出できる可能性を示した。②POZは熱応答凝集性を示すが、凝集後にがん細胞への取り込みが促進することを見出した。さらに、この取り込み機構についても明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画に基づき、①POEGMAの分子量あるいは側鎖のEG鎖長を変化させたポリマー誘導体を新たに合成し、これらの細胞内取り込みおよび担がんマウスを用いた体内動態について詳細に評価した。その結果、がん診断用薬剤キャリアとして最適なPOEGMA構造を見出すことができた。またPOZについては、分子標的認識部位(葉酸)を導入した薬剤を合成し、これが腹膜播種卵巣がんに効率よく集積することを明らかとした。②さらに、POZが凝集することで細胞取り込みが促進することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
計画に沿って、新規水溶性ポリマーの開発を継続するとともに、その放射性標識体(や蛍光標識体)を用いて、がんに対するラジオセラノスティクスの可能性を検証する。 具体的には、POEGMAについてもPOZと同様に熱応答凝集性を示すことから、温熱療法と併用することで、がんへの集積量が改善されることを期待し、検討を行う。良好ながん集積性が認められた場合は、治療実験へと移行する。さらに、POEGMA骨格を変化させた水溶性ポリマーを新たに合成し、担がんマウスにおける体内動態について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度同様、予定していた学会がオンライン開催となり、旅費が不要であったため。研究は概ね計画通り遂行できており、翌年度も計画に沿って実施する。
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