研究課題/領域番号 |
20K08067
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
片桐 健 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 物理工学部, 主幹研究員 (90510868)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イオン源 / EBIS / 重粒子線がん治療 / マルチイオン照射 |
研究実績の概要 |
重粒子線がん治療のさらなる治療効果の向上のために、数種類のイオンを用いて治療を行うマルチイオン照射法が提案されている。全国に広がる重粒子線がん治療施設にてこの方法を適用するためには、4種類のイオンの生成とその切り替えが素早く行える小型のマルチイオン生成システムが必要となる。本研究では、既存の重粒子線治療用小型ECRイオン源の1/4程度の小型イオン生成装置を革新的な方法により開発し、それらを4つ組み合わせた小型マルチイオン生成システムの実現可能性を調査する。 これまでの実験結果により本研究での開発により製作された小型イオン生成装置(EBIS)から取り出されたイオン数は目標の一桁下であることが明らかになっている。また、PICコードによる数値解析の結果により、その原因は取り出し系(引き出し電極-近傍のアインツェルレンズ)の形状が適切で無いためであることも明らかになっている。そのため、取り出しイオン数の向上を目指して、PICコードを用いた引き出し電極系のイオン輸送の解析・最適化、その結果を反映した再設計及び製作を実施した。このEBISにより十分な量の多価イオンの生成を行うためには、EBIS内部の真空度を向上させて残留ガスを排し、生成目的のイオンの損失を減らさなければならない。そのために、EBIS内部にはnon-evaporable getter (NEG)を備えているが、加熱電流が十分で無いことからNEGの初期化が進まない状況となっていた。この問題を解決するために、この電流路の断面拡大(~10 mm2)をし、最大100 A程度の加熱電流にまで耐えられる様に改良した。また、このEBISから得られるイオンの価数分布を行うために、分析電磁石を含むビーム輸送・診断系に設置することが必要となるため、輸送系に必要となる光学系の設置を考慮の上で、EBIS系の設置架台の整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属機関内での人事異動により、本研究に費やすことが可能なeffort量が低減されたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの準備をもとに、4種のイオン(He2+, C5+, O6+, Ne7+)に関してビーム診断を実施し、本研究で開発したEBISの性能の評価を行う。この評価に必要となるビーム輸送・診断系を構築するために、PICコードを用いたイオンの輸送計算、及び適切な光学機器系の設計・製作を進める。また、多価イオン生成に要求されるEBIS内部の超高真空を達成するために、NEG加熱用大電流電源を整備する。これらの後にEBISからのビームを輸送・診断系に導入し、価数分布測定、エミッタンス測定を実施しEBISの性能評価を行う。これと並行して、本研究の最終目標である、4つ組み合わせた小型マルチイオン生成システムの実現のために、供給イオン選択のための回転型ESD(electric-static deflector)の設計を、PIC解析により進める。以上の結果を元に、小型マルチイオン生成システムの実現可能性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
加速器施設管理が主務となったことに加え,新型コロナウイルス流行により在宅勤務となったために研究の推進が困難となった。それにより購入予定物品の調達にも遅れが生じた。この余剰金は,系構築のために必要な機器,及び部品製作に使用される予定である。
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