研究実績の概要 |
数種類のイオンを用いて治療を行うマルチイオン照射法では、4種類のイオンの生成とその切り替えが素早く行える小型のマルチイオン生成システムが必要となる。本研究では、既存の重粒子線治療用小型ECRイオン源の1/4程度の小型イオン生成装置(EBIS)を革新的な方法により開発し、それらを4つ組み合わせた小型マルチイオン生成システムの実現可能性を調査する。 今年度は、昨年度製作をした引き出し電極系・イオン輸送系を、EBISが備わる実験系にインストールし、目標生成量(1価相当で5e+10個の生成)の達成を目指して調整を進めた。また、Ne7+等の多価イオン生成に必要となる、EBIS内部の超高真空を実現するために、内部に備わるNEGの電流路断面積の拡大(~10 mm2)、及びそれを用いたNEGの大電流(100 A程)によるactivationを試みた。これらいずれにおいても、いまだ十分な調整・改良が進められておらず、引き続きR&Dを進める必要がある。 PIC解析による供給イオン選択のための回転型ESDの設計・開発に関しては、今年度は計算機環境の整備及びコードの改良に留まった。本件も引き続き改良を続け、設計・開発の完了を目指す。 本研究課題の研究機関を通じて、 (1)新たな小型イオン生成装置であるEBISイオン源の設計・開発、(2)EBISイオン源からのイオンを分析するための低エネルギービームトランスポート及び分析・診断系の整備、(3)上記(1),(2)を設計・解析するためのPICコード・計算環境の整備、を進めることができた。これまでの研究開発により製作・整備した(1)-(3)を基にして、生成イオンに関する目標の達成を目指して改良を進め、本研究テーマを実用化研究へと繋げることを目指す。
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