研究課題
本研究では特発性水頭症患者(iNPH)や神経変性疾患患者の頭部MR撮像を行い、脳室/くも膜下腔の脳脊髄液や脳実質の体積と、水分子の異方性との相関を検索し、疾患ごとにiNPHとの類似性を検索すると共に、集学的アプローチにて疾患特異性の指標を明らかにして鑑別能向上をはかることを目的とする。MRの解析手法としては、拡散テンソル画像を用いて、脳内のglympatic systemの指標になるALPS Indexや脳実質、脳室のvolume測定などの解析を行い、神経変性疾患における脳内の脳脊髄液の動態を検索する。まずアルツハイマー型認知症患者において、21例のAD患者と36例の正常対照者として、DTI-ALPS indexとPiB でのアミロイドPETとTHKのタウ PETで求めたstandard uptake value ratio (SUVR)との相関を検索したところ、前者と両側側頭葉、左頭頂葉と後部帯状回に、後者と両側側頭葉と右頭頂葉に負の相関を認めた。つまりアミロイドやタウが側頭・頭頂葉に沈着するに従って、glympaticの流れが低下する結果を示した。次いで水頭症をきたすことが多いとされる進行性核上性麻痺(PSP)に関しての研究であるが、患者24人と42例の健常者を比較して、DTI-ALPS indexと脳実質の白質体積の相関を検索したところ、ALPS indexと脳幹で正の相関を認めた。つまり脳幹の萎縮が進行するほど、glympatic systemの障害が強くなる、という結論であった。また剖検脳もMRI撮像を行い、生前脳MRIと形態の比較もして、生前脳と剖検脳で形態が異なる症例が見られ、脳内の水の流れが大きく関与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまで神経変性疾患患者60名(パーキンソン病31名、レビー小体性認知症65、アルツハイマー病30例、進行性核上性麻痺24名、皮質基底核変性症5名、多系統萎縮症20名、脊髄小脳変性症12名)、正常ボランティア40名のMRIを撮像した。また14例(PD 3例,CBD 3例,以下各1例;LATE+PART,HDLS,SSPE,Pompe病,NIID,白質脳症,痙攣後脳症,ALS)の剖検脳MRI撮像を行った.
患者の検査は引き続き行う。特に剖検脳のMRIに力を入れて症例の集積を行い、生前の脳MRIと比較検討していきたい。
COVID-19の影響で、学会の出張が少なくなったため。
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