研究課題/領域番号 |
20K08079
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
三木 健太朗 杏林大学, 保健学部, 准教授 (90732818)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 治療計画 / VMAT / 自動化 |
研究実績の概要 |
本研究ではX線放射線治療における理想的な線量分布を仮想的に生成し、強度変調回転放射線治療(VMAT)における治療計画の自動化を実現する研究を行っている。治療計画者の経験と熟練に依存していた線量分布品質の均一化を図り、施設間差を解消し、高精度放射線治療の品質と安全性向上に貢献する手法である事を証明する事を目的としている。 研究1年目では独自に開発したmodified Filtered Back Projection (mFBP)法を更に改良し、Simultaneous Integrated Boost (SIB)など、非常に複雑な線量分布でも問題なく仮想分布を作成できるようになった。下咽頭、中咽頭の治療を行った10例の患者データに対し、mFBP法を用いた線量分布が、十分な精度を持って作成可能であることを確認した。 研究2年目ではmFBP法の性能評価として、mFBPを用いた自動治療計画最適化法と、フィリップス社が開発したPlanIQソフトウェアが提供するFeasibility DVHを用いた治療計画最適化法とにおける、精度の比較検討を行った。20例の高リスク前立腺がん治療を対象とし、70Gy30分割の治療計画をそれぞれの手法を用いて行い、臨床に使用されたデータを含めた3者で結果を比較した。その結果、腫瘍への線量投与は十分な精度を保ったまま、特に直腸壁への放射線照射を抑える事が出来る事を確認した。本手法により、患者個人の状況に合わせた治療計画最適化テンプレートを自動的に生成し、治療計画者の経験に依らない治療計画最適化の提供が可能であることを確認した。 以上の内容をPhysics and Imaging In Radiation Oncology 21 (2022) 24-29にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定していたアルゴリズムの開発と、その有効性の確認においては1年目で頭頸部、2年目で前立腺が完了し、おおむね問題なく使用可能であることが確認できた。対外的な成果物の報告も、論文2報、学会報告1件を行っている。新型コロナウィルスの影響で学会報告が少々少ないが、研究自体は順調に進捗している。一方、研究開始当時と比較し、ディープラーニングに対する世間での関心が非常に高まっており、日進月歩で新しい技術が開発されている。本研究においても、本研究の目的に即したディープラーニングの活用は検討しており、更なる研究価値の向上に取り組んでいきたい。 同時に臨床現場への導入を見据えたアルゴリズムのデプロイについても、今後の活動に盛り込んでいきたいと考えている。 本研究ではオランダ、Radboud大学メディアセンターと共同研究を行っており、2年目の成果として論文を1報作成することが出来た。来年度の研究終了に向け、目に見える形で研究をまとめる活動を3年目に展開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
我々は今回報告したmodified Filtered Back Projection (mFBP)法に加え、ディープラーニングを用いた仮想的線量分布の生成も開発している。それぞれに一長一短があるが、臨床応用を鑑みるとすで十分な精度に達しているように思える。一方臨床導入においては、現在のディープラーニングの方法は学習したデータセットにより精度が担保できる条件が限定されるという問題が依然散見され、画期的な解決法の開発が望まれるところである。 本研究では当初の目的である、施設間格差を解消するための試みとして、学習データセットによらずあらゆる放射線施設で導入可能な、ロバスト性の高いシステムの開発を、最終年度の研究目標としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初旅費として予定していた費用は、学会や研修会への参加、他施設との打ち合わせを計画していたが、新型コロナウイルスの影響により全て中止となった。一方本年度に導入予定としていたワークステーションは無事に導入でき、次年度使用額が生じてしまったものの、大筋としての執行計画は特に問題なく推進していると考えている。
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