研究課題
静脈血栓塞栓症は下肢や骨盤内の深部静脈に形成された血栓が遊離し、肺動脈を閉塞することで肺血栓塞栓症をきたす重篤な疾患である。近年の臨床研究において、静脈血栓塞栓症のおよそ半数が無症候性で、予防や治療で投与される抗凝固薬で年数%の頻度で重篤な出血を誘発すること、などが報告されており、塞栓リスクの高い血栓の検出や抗凝固薬の効果予測となる質的画像診断法の確立は重要な課題となっている。MRI (Magnetic resonance imaging) の拡散強調画像とT1強調画像との組み合わせで深部静脈血栓を描出しうることが報告されている。しかし深部静脈血栓症の診断における拡散強調画像の有用性は確立されていない。本研究では、静脈血栓塞栓症の臨床画像、静脈血栓のモデル動物、血液のin vitro MRIを用いて、静脈血栓塞栓症の質的診断に繋がる拡散強調画像所見とみかけの拡散係数を明らかにすることを目的としている。臨床画像および静脈血栓のモデル動物の検討から、拡散強調画像は深部静脈血栓を明瞭なコントラストで描出することが可能で,経時的な信号値およびADC値の変化を捉えた.病理組織学的な評価において血栓は経時的な器質化像を呈し,血栓の赤血球成分は,拡散強調画像の信号値と正の相関,ADC値と負の相関を示した.拡散強調画像は静脈血栓の異なる成分を反映した経時的な変化を描出することが可能で,深部静脈血栓の診断に有用な情報を提供しうることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
MRI装置を用いた臨床画像および静脈血栓のモデル動物の検討から、拡散強調画像は深部静脈血栓を明瞭なコントラストで描出することが可能で,経時的な信号値およびADC値の変化を捉えた.病理組織学的な評価において血栓は経時的な器質化像を呈し,血栓の赤血球成分は,拡散強調画像の信号値と正の相関,ADC値と負の相関を明らかにした.
MRIを用いたT2強調画像, T1強調画像および拡散強調画像は,深部静脈血栓の異なる成分を反映したコントラスト画像を描出できるが,磁化率強調画像やQSM定量解析などを用いた静脈血栓の組織成分や血栓形成能との関連を明らかになっていない.これらの画像を検討するとともに,静脈血栓形成のリスクと抗凝固薬の効果予測や判定を評価できる新たなMRI画像の技術開発を進める.
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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