がん中性子捕捉療法(NCT)はホウ素(10B)やガドリニウム(157Gd)などの放射線増感元素と熱中性子の中性子捕捉反応(Neutron Capture Reaction,NCR)の結果として生じる放射線による細胞障害作用を利用したがん治療法である.このNCTでは放射線増感元素を腫瘍組織内に均一かつ所定量以上を集積させることが治療成功に重要となる. 本研究では,Bが均一に分布しづらいと考えられる巨大腫瘍に対してGdを放射線増感元素としたNCTの適応を考え,巨大腫瘍へ成長しやすく,臨床においてBの分布の不均一さが報告されている頭頸部腫瘍に対するGd-NCTの適応を検討する.また,これまでに申請者らが開発してきたGd含有ナノキャリアーの性質が抗腫瘍効果に与える影響を評価し,Gdを含むキトサンナノ粒子(Gd-nanoCP)の持つ性質のコントロールがGdを用いたNCTの効果増強に有用かを検討した. 本課題で,巨大腫瘍を想定した大腿部皮下担がん動物モデルと頭頸部腫瘍を想定した咬筋担がん動物モデルに対して,Gd-nanoCPを用いたGdNCTは抗腫瘍効果を示し,その効果はGd-nanoCPをより腫瘍組織内で広く分布させると考えられる表面修飾によって,細胞1個当たりの付着粒子数が増加し,細胞取込の絶対値は大きく変化しなかったが,抗腫瘍効果の増強が示されることを細胞,動物の双方で実証することに成功した. Bを用いたBNCTでは粘膜への損傷がみられる場合が多い部位にも関わらず,Gdを用いることで,選択的な腫瘍縮小効果が得られたことから,今後の医療応用が期待される結果を得ることができた.
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