研究課題/領域番号 |
20K08096
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
永津 弘太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, 研究統括(定常) (30531529)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核医学治療 / アルファ線標的アイソトープ治療 / アクチニウム225 / ラジウム226 / ターゲット / 核反応 / 放射性医薬品 / 放射線治療薬 |
研究実績の概要 |
Ra-226を原料にAc-225を遠隔製造するための本研究では,目的生成物であるAc-225よりも作業者の主たる被ばく源となるRa-226について,遠隔的な取扱いを可能にする装置化を試みる。本年度は,従来行ってきた基礎検討結果を元に,①Ra-226電着条件の確立,②経路設計,及び③装置部品の準備を行った。 具体的な成果として,①廃棄Ra針から単離回収し,イオン交換樹脂にて精製したRa-226を0.1M-塩酸・1 mLに溶解後,0.5M-酢酸アンモニウム・2 mLと混和することで緩衝性を持たせたRa溶液を電解液とした。ここへ100 mAの直流定電流を3時間掛けることで,約37 MBq(1 mCi)のRa-226を最大97%固定化することを可能にした。 ②・③について,基礎検討で評価を行ってきた精製用部品並びに手順・経路を図面化し,グローブボックス内での遠隔操作を目的とする経路切替装置を設計・製作した。Ra-226とその子孫核種から発せされるα線の中長期的な影響(部品の劣化)評価については,本研究で検討可能な範囲を超えるため,また,定期/緊急的な部品交換を容易に行うべく,接液部には市販されるディスポーザブル部品を利用することとした。即ち,本遠隔化装置はディスポーザブル部品を駆動するプラットフォームとして働き,市販される三方活栓等を所定の角度で駆動させる機能を持ち,グローブボックス外に準備する制御機器から操作を行う設計とした。また,長期的な利用をする際,機械部品等の故障や交換等は避けられないものの,グローブボックスという極めて操作性が悪い作業環境では,当該交換・修理作業は相当な困難が予想される。従って,バルブ制御機能をユニット化し,交換時には該当するユニットを最小単位として扱い,廃棄物の最小化と作業性の両立を図る設計とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
部品調達から装置組立までは順当に行っているものの,コールド試験の頻度が十分ではなく,引き続き,十分な動作確証を得るための試行を継続することとする。 若干の遅れを生じている理由は,いわゆるコロナ禍による出勤機会の減少であり,研究計画や具体的な研究結果そのものに起因する予期せぬ障害によるものではない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発している部品・装置の全ては,α線源を扱うグローブボックス内へ導入・設置すると同時に汚染物として扱われるため,二度と当該グローブボックス外へ取り出せなくなる。 従って,個々の部品については十分な動作確認をすると共に,組立部品として全部品を装置化した際に意図した機能を発揮する確証を得てから,実証試験に推移する。設計や仕様変更などが必要になった場合に備え,当該グローブボックス内へ装置一式を導入する前に,十分な評価,即ち,Raの代替元素として広く認識されているBaを利用し,一般実験室環境で動作試験を行った後,Raの利用を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による移動制限(学会参加などの機会減少)が主たる理由と考えられ,物品費の多寡に関しては誤差の範囲と考えられる。次年度の利用でおよそ計画どおりに収束すると考えているが,移動制限が過度に延長する場合,この限りではない。
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