研究実績の概要 |
核医学治療を支える放射性物質のなかで,近年世界的に注目されているAc-225の製造方法,即ち,①廃棄線源として保管されていたラジウム針からRa-226の単離・回収法,②回収したRa-226をターゲット物質として固定化する技術,③深刻な汚染を避けるための照射装置,④Ac-225とRa-226の分離精製技術,⑤精製Ac-225の品質評価法及び実際の標識効率の確認,及び⑥Ra-226の再生法,それぞれの開発に成功した。 具体的には,①切断したRa針とキレート樹脂を混和・放置し,定量的なRaの抽出,②酢酸アンモニウム+塩酸緩衝液に溶解したRa-226溶液に対し,定電流をかけることで定量的なRaの固定化(電着),③垂直照射法の発展形として,密閉空間(箱)内に照射装置を設計し,有事の汚染に備えた照射機構・手法の確立,④2種類の機能性イオン交換樹脂(DGA,LN)と3種の異なる濃度を持った硝酸を利用すること,並びに時間経過により不純物を減衰させたのち,再度上記2種の樹脂を利用してAc-225の精製を行うことで高純度Ac-225が得られる製法の確立,⑤Radio-TLCによる放射化学的純度やアルファ線波高分析による放射核種純度の評価法確立,及びペプチド・抗体それぞれの候補化合物の標識に成功,並びに⑥キレート樹脂(Chelex100)を利用したRa-226の精製法の確立が挙げられる。これらの成果をもとに,最大約2 mCiのRa-226から,照射終了時において20μCiを超えるAc-225を得ることが出来た(15.6 MeV, 30μA x 5 h)。 本年は加速器の火災の影響によりAc-225を製造することが出来ず,完全な評価には至らなかったが,上記処理を遠隔的に行う装置としての機能を評価することが出来,加速器の復帰と共に本開発機の実践利用が望まれる成果を得た。
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