研究課題/領域番号 |
20K08098
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
青木 昌彦 弘前大学, 医学研究科, 教授 (70292141)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺癌 / 体幹部定位放射線治療 / 放射線感受性 / 低酸素 / ブドウ糖代謝 / 拡散係数 |
研究実績の概要 |
水分子の自己拡散を画像化するMRIの拡散強調画像は、がん細胞の細胞密度やがんの活動性を反映することから、前立腺癌の病期診断や薬物療法や放射線治療の効果判定に役立つ検査として最近注目されている。拡散係数(ADC)がその代表的指標として広く用いられているが、検査装置ごとの数値のばらつきや画質が悪いことなどの理由により肺癌診療ではあまり注目されてこなかった。申請者は、放射線感受性を左右する腫瘍血流量の低下による低酸素と、腫瘍の悪性度に関連するSUVmaxに着目し、腫瘍の血流量低下やブドウ糖代謝の亢進が体幹部定位放射線治療後の局所再発に大きく関わっていることをdual-energy CTとFDG-PET/CTを用い肺癌で明らかにした。本研究では、dual-energy CTとFDG-PET/CTの治療前評価に拡散係数を加えることの意義、および再発高リスク群の経過観察における拡散強調画像の意義と有用性について、肺癌で明らかにすることを目的に研究を行った。 初年度は、体幹部定位放射線治療を受ける肺癌患者6名に対して、dual-energy CTによる腫瘍血流の評価、FDG-PET/CTによる糖代謝の評価、全身MRIによる拡散係数の評価を行った。放射線抵抗性を示す肺癌は、腫瘍血流の低下、糖代謝の亢進、拡散係数の低下があると考えているが、症例数がまだ不足しており、治療後の経過観察期間も短いため、引き続き症例の集積と治療後の経過観察を継続する予定である。 従来のdual-energy CTとFDG-PET/CTの治療前評価にMRI検査を追加することにより、予後予測の精度が更に向上することが期待できるほか、再発高リスク群を絞り込むことにより、今後、臨床応用が期待されている免疫チェックポイント阻害剤による補助療法の適応判断に有用な情報を提供することが可能と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の前半は、更新された3テスラMRI装置にノイズが入る不具合により症例の集積が遅れたが、後半はコイルやケーブルの交換により不具合が解消され症例の集積が可能となった。一方、初年度の後半にPET/CT装置の更新があり、3カ月間検査が出来ない状況となったが、その間は近隣の病院にPET/CT検査を依頼した。しかし、PETの検出器がヨウ化ナトリウムからゲルマニウム半導体に変わったことにより画質が大幅に改善したものの、SUV値が高めに出ることが判明したため、今後のデータの解析には数値の校正が必要である。dual-energy CTについては順調に症例集積が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2年間で50例を目標に症例集積を進め、最終年度で、本研究の目的である「限局性肺癌に対する定位照射におけるdual-energy CTとFDG-PET/CTの治療前評価に拡散係数を加えることの意義、および再発高リスク群の経過観察における拡散強調画像の意義と有用性の解明」を達成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集や研究成果発表のための国内外への出張が新型コロナウイルス感染症の影響により全てキャンセルとなったため、次年度使用額が生じました。次年度では、出張旅費や画像データ収集用のハードディスク増設、消耗品の購入等、適切に執行する予定である。
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