研究課題/領域番号 |
20K08105
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白神 宜史 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任准教授(常勤) (00560400)
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研究分担者 |
兼田 加珠子 (中島加珠子) 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任准教授(常勤) (00533209)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルファ線 / 核医学 / targeted alpha therapy / astatine / 211At / tyrosine |
研究実績の概要 |
α線核医学治療の医薬品候補として、アスタチン(211At)標識チロシンアナログ化合物3種,211At-AAMT, 211At-AAMT2及び211At-AAMT3(以下、211At-AAMT等と略す)、の合成に成功した。これらの製造原料(前駆体)はいずれもボロン酸(又はそのエステル体)を導入した化合物である。これらのボロン酸導入化合物に、ヨウ化カリウム存在下で211At水溶液を添加すると、いずれも効率よく211At標識体が合成された(合成収率>80%)。更に、同標識体を固相抽出カートリッジ(Oasys HLB)に捕集・溶出したところ、高純度の精製物が得られた(放射化学的純度>95%)。以上の成果について特許を出願した(3/25)。 211At-AAMT等は、中性型アミノ酸トランスポーター(LAT1)を発現するがん、すい臓がん、メラノーマおよび骨軟組織腫瘍等、の治療に有用と期待される。そこで現在は、細胞実験及び動物実験により生物学的評価の実施中である。既に211At-AAMT等は、LAT1に親和性があり、かつ特異的にがん細胞に取り込まれることを確認している。また、骨肉腫移植マウスに211At-AAMTを投与したところ、腫瘍の増殖抑制効果が示された。今後は、臨床試験に用いるのに最適な化合物を選択すべく、詳細な比較実験を進める予定である。 また並行して、前立腺がんの治療を効能とする211At標識ペプチド化合物についても合成研究を開始した。前述と同様に、ボロン酸導入前駆体をデザインし、新化合物を合成した。得られた化合物が、211Atで標識できることを確認した。今後、前立腺がん移植マウスを用いて、生物学的実験による性能評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医薬品製造に適した新合成法を確立した。新規化合物3種(医薬用)、および新規の同製造原料(3種)の合成に成功した。新化合物のがん治療効果が確認された。以上の合成技術を特許出願した(1件)。
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今後の研究の推進方策 |
新合成法を用い、更に新アナログ化合物を合成する。細胞および動物実験により、新化合物のがん治療効果を調べる。臨床応用に適した化合物のスクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のためR2年度旅費の執行額が少なかったので次年度(R3)に繰り越し,R3年度に論文投稿(Open Access)を追加して計画するため.
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