APOBEC3B(A3B)が関与するがん化リスクを抑制する分子機構を明らかにするためにA3B発現もしくは欠損細胞を用いてDNA損傷修復及び複製段階における相互作用分子の同定及び機能解析を行うことを目的とした。A3Bの相互作用タンパク質の解析のため、A3B-AcGFPを発現させた細胞を作製し、超解像度共焦点顕微鏡を用いて局在を確認した。A3Bは核質全体に不均一に存在し、核マトリクス構造を部分的に破壊すると核質に保持されなくなることが明らかになった。A3Bの核質内での局在変化はDNA損傷によって引き起こされ、AP siteの増加は、AP siteの近傍へのA3Bを集積させた。この集積はDNase Iによって部分的に解消されるため、A3BがDNAを含む複合体と結合していることが示唆された。本研究におけるDNA傷害によるA3Bの核マトリクスからDNAへの局在変化は、A3BがR-loop構造に結合するといういくつかの研究結果と本質的な関わりがある可能性がある。核分画の解析からも核マトリクス画分にA3Bは存在しているが、DNA損傷後のA3Bの分布に変化があることが示された。さらにこのA3Bが存在する核マトリクス部位とその相互作用を解析するため、DNA損傷誘導のために薬剤投与や放射線照射したA3B-AcGFP発現細胞をVHH抗体を用いて免疫沈降と共沈タンパク質のDIAプロテオーム解析を行った。薬剤投与や放射線照射後、細胞骨格系の核マトリクスタンパク質の結合量の減少、hnRNPファミリーを含む一部のRNA結合タンパク質及びDNA損傷修復に関与するタンパク質との結合量の増加が認められた。AP siteの近傍へのA3Bの集積に関与に関し、A3Bと直接相互作用のあるタンパク質の解析を行ったが、現時点で関与を確認できず、継続して解析を進める必要がある。
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