研究課題/領域番号 |
20K08120
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
山下 剛範 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (10410937)
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研究分担者 |
有馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 医療科学研究科, 教授 (30263015)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タウリン / タウリントランスポーター / 放射線損傷緩和 |
研究実績の概要 |
放射線曝露による細胞損傷をタウリンが緩和するシグナル伝達経路を解明することは、新たな創薬開発につながることから非常に重要である。本研究の目的は、ヒトへの放射線被ばく影響の緩和にタウリンを応用するための研究基盤を確立することである。放射線曝露による細胞損傷は、複数のシグナル伝達経路によって媒介される。令和3年度は、「放射線曝露による細胞損傷をタウリンが緩和するシグナル伝達経路」を明らかにすべく、この検討に最適なタウリントランスポーター欠損モデルマウスを用いて病理組織学的分析を行った。 実験群は非照射群, 照射群, タウリントランスポーター欠損モデルマウス照射群とした。放射線曝露後のPCNA発現、Ki67発現、TLR4発現を病理組織学的手法により比較解析した。腸上皮幹細胞の増殖能力がタウリントランスポーター欠損モデルマウスで低下することを見出した。タウリンの欠乏は、腸上皮幹細胞の増殖能力を低下させた。同様に、クリプト周囲マクロファージにおけるTLR4発現がタウリントランスポーター欠損モデルマウスで低下し、腸上皮幹細胞の増殖能力低下と一致することを見出した。放射線曝露による細胞損傷をタウリンが緩和するシグナル伝達経路にTLR4活性が強く関連する可能性が示唆された。 本研究から、タウリンの欠乏は、 TLRを介したシグナル伝達経路、ROSの生成、細胞死経路を効果的に調節することができず、放射線曝露による腸上皮幹細胞の増殖能力低下につながった可能性が考えられる。放射線曝露後のタウリン濃度の維持が放射線による細胞損傷を調節するカギとなることが示唆された。この研究結果は令和4年3月7日に開催された第8回国際タウリン研究会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射線損傷緩和にはTLR3, TLR4, TLR5の関連が報告されている。しかしタウリンによるDNA損傷緩和はどのTLRファミリーに関与するか全く不明であった。 今回の研究成果より放射線曝露による細胞損傷をタウリンが緩和するシグナル伝達経路にTLR4活性が強く関連する可能性が示唆された。現在その他TLRファミリーについても解析準備を進めており当初予定に追いつくよう進めている。
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今後の研究の推進方策 |
放射線損傷緩和にはTLR3, TLR4, TLR5の関連が報告されている。しかしタウリンによるDNA損傷緩和はどのTLRファミリーに関与するか未だ明らかではない。そこで、本年度は放射線曝露による細胞損傷をタウリンが緩和するTLRファミリーの量的変化を組織学的に解析に解析し、p53経路およびNF-κB経路との関連を組織学的に比較し、放射線曝露による細胞損傷をタウリンが緩和するシグナル伝達経路を解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大に伴い、当初予定した研究が半年ほど遅れている。本年度計画していた抗体試薬や測定器キットの購入が見込みよりも低下しており、次年度使用額が生じた。 次年度は、遅れを取り返すべく、研究に必要な抗体試薬、測定器キットを購入する。
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