骨粗鬆症は骨密度と骨質劣化により骨強度が低下した状態であり、加齢とともに増加する頻度の高い疾患である。脊椎の椎体骨折や大腿骨近位部骨折などにより著しい生活の質(QOL)低下をもたらし、最終的には死亡、長期臥床状態へとつながり、健康寿命の維持に大きな影響をおよぼす。日常診療では、2重エネルギーエックス線吸収測定法(DXA)による骨密度が骨粗鬆症評価に用いられているが、骨強度は骨密度のみでなく、骨微細構造などの骨質とも強く関連しているため、DXAによる骨密度測定のみでは骨折リスクを十分に予測し得ない。また、様々な生活習慣病が骨折リスクと関連していることが、多くの縦断的観察研究によって実証されている。特に2型糖尿病では、骨密度が維持されている骨折例が多く、骨密度や血液や尿で測定可能な骨代謝マーカーでは生活習慣病関連骨折の予測は難しい。 本研究の目的は、CTによる肺がん検診を行った逐年検診受診者を対象として、CT画像で評価可能な多くの生活習慣病関連画像データ、および同時に施行した生活習慣および生活習慣病と関連する血液検査や呼吸機能検査のデータを用いて、種々の骨折関連因子と実際に生じた骨折との関連性を明らかにすることである。我々は、50歳から60歳台に対して、長期にわたって総合健診と低線量CTを同時に行った単施設からの逐年データを調査した。CTデータから骨密度、COPDと関連する肺野定量的データ、内臓脂肪量、筋肉面積や吸収値などを計測し、年齢、BMI、喫煙指数、HbA1c、呼吸機能検査の1秒率などの総合健診で得られたデータを加え、骨折との関連性を評価した。その結果、年齢とCTデータから得られる骨密度、肺野および筋肉のCT定量的データの組み合わせが、将来の椎体骨折と密接に関連していることが明らかになった。
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