研究課題/領域番号 |
20K08129
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
井上 大 金沢大学, 附属病院, 助教 (00645129)
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研究分担者 |
田島 秀浩 金沢大学, 附属病院, 講師 (00436825)
堀 寧 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (90781302)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / CT / MRI / 画像バイオマーカー |
研究実績の概要 |
膵癌の切除術後予後を規定する因子として診断時の腫瘍のサイズや進展度に加え、腫瘍自体の悪性度や転移能が関与することが明らかとなってきており、これらの悪性度や転移能には腫瘍内微小環境と呼ばれる癌細胞以外の線維化や炎症細胞、血小板などの間質要素が深く関わっている。このためこの腫瘍内微小環境のなかでも特に腫瘍の増殖/転移能に寄与すると考えられている腫瘍関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast;CAF)の多寡を術前の画像から推定し、治療方針決定のための画像バイオマーカーを確立することを目的に研究を行った。 1.令和2年度の計画としてまず化学療法等の術前療法を行わずに外科的切除が施行された症例の集積およびデータベース作成を行った。現在金沢大学附属病院および北陸関連施設、名古屋市立病院および関連施設より症例のピックアップ、集積を行っており、既に113例の候補症例の集積が終了している。 2.既に集積を終了した症例に関して臨床情報や術式、術前採血データ(腫瘍マーカーなど)、術後補助療法の有無、予後および転帰などの情報を順次収集し、データベースへの追加を始めた。 3.また集積症例については匿名化した術前の画像データ(CT, MRIなどのDICOM data)を金沢大学附属病院および北陸関連施設では集積を始めた他、金沢大学附属病院症例では切除標本に対するCAF評価のための免疫染色およびデジタル化を順次開始した。 現状においては集積症例数は目標(200症例)には達していないものの引き続き上記施設での症例集積を進めることで収集可能な目処がたっている。本年度研究の過程において下記論文の発表および関連学会での講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は令和2,3,4年度の3年間での計画であり、令和2年度に関しては術前療法なく切除加療が施行された膵癌症例の集積、データベース化を研究の中心に据えて進めた。症例集積に関しては目標症例数(200症例)には現時点では届いていないものの今後金沢大学病院および北陸関連施設ならびに名古屋市立大学病院およびその関連施設の病理システムからの症例検索により症例集積が進められる見通しが立っている。また既に収集を行った症例に関しては臨床情報および画像、病理データの集積が進んでおり、病理データに関しては一部で免疫染色およびバーチャル化も開始することが出来た。さらに症例集積を進めるために当科教授蒲田敏文を通じて北陸関連施設への症例検索の呼びかけもあり、症例収集が進む見通しが立っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に関しては引き続き膵癌切除症例の集積を継続するとともに、既に集積済み症例に関して臨床情報や画像、病理データ、術後補助療法の有無や予後についてのデータ収集を進める他、既に集積された画像データに関して各画像検査における視覚的評価を進行させる。また集積済み病理標本に関してはHE染色に加え、CAFの評価に必要な免疫染色(α-SMA、ポドプラニン、FAP)を進め、バーチャル化を行う他、CAFの定量化のためのソフト(キーエンス社)のセットアップならびに至適評価法の検討を始める。また本研究では画像データに関してはMATLAB(MathWorks社)を用いたテクスチャ解析が必要になるため、解析用ソフトの検討、セットアップを始める予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は膵癌切除症例の集積、データベース作成を中心に研究を行ったがこの中で特に本研究の対象症例の説明や症例集積依頼、研究内容説明等に北陸関連施設や名古屋市立大学および関連施設へ数回の出張を予定していたもののコロナ禍で移動が制限されたため、メール等での打ち合わせに変更になった他、国内外の参加予定学会、研究会や講演が中止もしくはWebおよび不参加(病院規定による)になった。さらに画像データの解析用MATLABのセットアップもコロナ禍において担当業者との面会が充分に行えず、詳細が詰めれなかったため、購入を次年度以降に延期することとしたため、次年度使用額が生じた。令和3年度は画像データがある程度集積され、コロナ感染状況が改善した時点でMATLABの購入、セットアップを行う他、病理データの集積および免疫染色/バーチャル化/定量化を進める目的および国内外の学会/研究会参加により情報収集を加速させる目的や研究協力施設に出向いて研究内容の直接説明や症例収集協力依頼に使用する予定としている。
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