研究課題
コロナ渦のためPETのキャリブレーションおよび動物実験などがなかなか始められなかったが、ファントムを用いた実験はすぐに始められた。代謝性脳疾患の一つであるWernicke脳症において脈絡叢のエネルギー産生供給不足から脳脊髄液の組成の違いが起こるということを想定して、MRIにおいて髄液の組成(Na、glucoseあるいはアルブミン濃度)や体温が変化した場合、その違いが見かけの拡散係数(ADC値)の変化からdetectできるかの基礎研究から行った。常温(20℃)にてNa(基準濃度は1%)は基準濃度から半分希釈や2倍濃度でもほとんどADC値に変化がなかった(0.99-1.03倍)が、40℃でADC値は0.91-0.94倍と変動幅が増大した。常温アルブミン(基準5%)では0.93-1.06倍に変化したが、40℃(変性あり参考程度)では0.81-1.06倍に変化した。常温glucose(基準濃度5%)は2倍濃度でADC値は0.91倍に変化し、40℃で0.93倍に変化した。いずれもそれぞれの基準濃度で、各試料を20℃から40℃に変化させた時のADC値は2.0-2.5倍程上昇し、特にglucoseとアルブミンで変動幅が大きくなる傾向が見られた。分子径の大きい物質の濃度変化による変動がADC値に影響を及ぼしやすい可能性が示唆された。Wernicke脳症が脈絡叢障害による髄液のglucoseやアルブミン濃度異常が病態の一因であるとすれば髄液のADC値変化から診断補助に活用できる可能性がある。また、MRIにおいて脳酸素代謝画像はT2減衰を反映したシークエンスを使用するが、その検証のため金属釘による基礎研究も別に行った。さらにいくつかの先天性代謝性疾患の詳細な画像解析も行い、エネルギー代謝に関係する代謝経路の理解をより深めた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Acta Medica Okayama
巻: - ページ: -
Radiology Case Reports
巻: 16 ページ: 656-660
10.1016/j.radcr.2021.01.003