研究課題/領域番号 |
20K08139
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
萩森 政頼 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (40446125)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MRIプローブ / 19-F / 卵巣癌 / フルオラス相互作用 / ナノキャリア |
研究実績の概要 |
本研究では、卵巣癌の早期診断薬剤の開発を目的に、フッ素基が示す高いMRIシグナルとフッ素基同士のフルオラス相互作用を基軸とするフッ素化脂質分子鎖を構築し、高標的性かつ高安全性を有する卵巣癌標的ナノキャリア型19F-MRIプローブへ製剤化を行い、卵巣癌の早期検出・質的診断プローブとしての有用性を検証する。卵巣癌は化学療法感受性の高い癌であるが、初期の自覚症状が乏しく、卵巣癌が進行した状態で発見される場合も少なくない。また、現在、臨床で用いられているCTやMRIによる画像診断では良性腫瘍と卵巣癌との質的診断が困難であるため、卵巣癌を早期に発見し治療に繋げるための新しい早期診断薬剤の開発が望まれている。 本年度は、卵巣癌の腫瘍マーカーであるCA125に特異性を示す新規CA125標的フッ素化脂質の開発を行うにあたり、まず、高度にフッ素化されたフッ化炭素鎖同士のフルオラス相互作用によって実際にナノキャリアの脂質膜の安定性が向上するか検討を行った。フッ素含有量の異なるフッ素化脂質の設計および合成を行い、フッ素基の数が13個から17個までの化合物を高収率で合成することに成功した。合成した化合物の自己組織化について、空気/水界面における吸着速度論的解析を行ったところ、フッ素含量が多くなるにつれて表面圧が増大し、フッ素基を17個含有するフッ素化脂質において、より安定な単分子膜を形成できることがわかった。また、リポソームやマイクロバブルの組成の一つであるDPPCとの相互作用について、DPPCのLangmuir膜にフッ素化脂質を添加し、液体膨張および液体凝縮における表面圧の変化を評価したところ、どちらの状態においても表面圧は上昇を示し、DPPCの単分子膜にフッ素化脂質が差し込まれていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はほぼ研究計画通りに研究を遂行することができた。本研究では高標的性かつ高安全性を有する卵巣癌標的ナノキャリア型19F-MRIプローブを目的としており、高度にフッ素化されたフッ化炭素鎖同士のフルオラス相互作用によってナノキャリアの安定性が実際に向上するかどうかは本研究の成否を左右する。合成したフッ素化脂質はフルオラス相互作用により高い安定性を示したことから今後の展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
高い安定性を示したフッ素化脂質のナノキャリアについて、C3F8ガスなどの超音波造影ガス封入時の安定性などの基礎的な物性を蛍光分光法等を用いて評価を行うとともに、卵巣癌の腫瘍マーカーであるCA125に特異的なペプチドを修飾することによりCA125標的フッ素化脂質を開発し、卵巣癌標的ナノキャリアの製剤化を行う。以上の検討の後に、卵巣癌細胞を用いたインビトロ実験、腫瘍移植動物を用いたインビボ実験を行い有効性を明らかにする。
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