研究課題/領域番号 |
20K08140
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
片桐 千秋 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00443664)
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研究分担者 |
石内 勝吾 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10312878)
菅原 健一 琉球大学, 病院, 講師 (50375573)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高気圧酸素療法 / HBO / 照射線照射 |
研究実績の概要 |
悪性神経膠腫の標準治療は手術による腫瘍の摘出と術後の化学療法を併用した放射線照射療法であるが、放射線照射は副作用として患者の認知機能を低下させる側面を持つ。とりわけ照射対象の主要部が海馬近傍にある場合において顕著である。本研究は放射線による神経損傷、それに伴う認知機能低下に対して高気圧酸素療法併用法が神経細胞に対しての保護作用を示し認知機能低下を予防するメカニズムをマウスを用いた解析と臨床データの解析と合わせて解明していく。本年度はマウス脳スライスを用いて海馬神経細胞のNMDA受容体を介した神経機能解析をカルシウムイメージング解析法にて行った。マウス全脳に1回あたり2Gyを照射し、連日5日、合計10Gyの放射線照射を行った。放射線単独照射群(RT群)と高気圧酸素併用照射群(HBO+RT群)に分けて照射を行い、対象となる非照射群と比較して解析を行った。CA1領域ではRT群およびHBO+RT群どちらともカルシウムの流入が観察されず放射線照射により神経機能が低下していた。しかしながら、DG領域においてはRT群は神経機能が著しく低下していたがHBO+RT群は非照射群と比較すると低下していたがRT群と比較すると神経機能が保持される傾向を示した。臨床症例からの解析は拡散テンソル画像法(DTI)を用いた白質繊維路の描出解析にて、高気圧酸素併用群において放射線治療前と治療後を比較して下前頭後頭束(IFOF)のFA値が上昇したが、放射線単独照射群では見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウィルス感染拡大防止のために実験できない時期もあったが、臨床症例の解析に集中して時間を費やすことができた。臨床症例は高気圧酸素療法加療が標準的治療になっているため適応外の症例(閉所恐怖症、耳鼻障害)が放射線単独照射群となるが今年度の新規症例はいなかった。本年度は過去の放射線単独照射の症例と比較したが症例数は3症例と少ない。今後、研究期間内に症例が出ることを期待する。マウス脳スライスを用いたカルシウムイメージング解析では放射線による神経障害は著しいがDG領域において高気圧酸素療法併用による神経保護効果の傾向が認められたため。
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今後の研究の推進方策 |
海馬スライスカルシウムイメージング解析によりDG領域の神経細胞が高気圧酸素療法により保護される可能性が示唆されたため、DG領域を対象にした電気生理学的解析を進めていきたい。またDG領域におけるNMDA受容体の発現量および膜移行についてウェスタンブロット解析を追加していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大防止のための緊急事態宣言期間中およびその後の自粛期間中に実験を中断したため実際の備品・試薬・動物の使用が減少したため。
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