悪性度の高い脳腫瘍の手術後に行われる放射線療法は、加療期間中の副作用として認知機能の低下を伴うことが多い。特に照射対象部位が海馬近傍にある場合においては認知機能の低下が顕著である。本研究は放射線による神経損傷、それに伴う認知機能の低下に対して高気圧酸素療法の併用が神経保護効果を示し、認知機能低下を予防するメカニズムについてモデル動物を用いた解析を行った。昨年度までに健常マウス全脳への放射線照射が海馬の神経新生の抑制及び成熟スパインの消失に加えて、大脳白質神経細胞の軸索縮小および成熟スパインの消失を引き起こすことを明らかにしてきた。成熟スパインの消失が放射線照射により異なる脳部位でも起こり、かつ高気圧酸素療法の併用により成熟スパインの消失が抑制されることから、成熟スパインの維持に着目し、分子メカニズムの解明のため成熟スパインの形成と維持に重要なタンパク質について解析した。海馬における成熟スパイン形成に関与するタンパク質でアクチン重合促進タンパク質、ドレブリンの発現量をウェスタンブロット法で観察した。CA1、CA2、CA3ではドレブリン量に変化はなかったが歯状回(dentate gyrus)において高気圧酸素療法変容によりドレブリン量が減少していた。この減少がどういう意味なのか今後検討していきたい。
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