研究課題/領域番号 |
20K08149
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
藤永 雅之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (70623726)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 18F-フルオロアルキル化 / 18F-オキシラン誘導体 |
研究実績の概要 |
(1) [18F]含フッ素オキシラン誘導体(CF3)の開発について:[18F]-(2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランを合成するため、グリシジルトシレートと[18F]CF3アニオンとの反応を検討した。[18F]CF3アニオンは反応系中でClCF2CO2Meと[18F]F-との反応により生成すると考えた。反応は2ポット反応で行い、[18F]エピフルオロヒドリンと同様に第二反応容器内に、蒸留した[18F]-(2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランをトラップする予定であったが、ほとんど標識中間体がトラップされなかった。その後の検討により、目的の標識中間体ではなく、[18F]CHF3が生成していることが明らかとなった。これらの結果から、系内で[18F]CF3アニオンはうまく生成しているものの、先にプロトン化されて[18F]CHF3に変換されているものと考えられる。
(2) (2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランの合成法について:グリシジルトシレートと求核性の高いCF3源として(phen)CuCF3の調製法などを検討した。しかしながら、これまでに最適な調製法を見出すことはできなかった。今後、さらに検討が必要である。
(3) O/N-トリフルオロメチルアルキル化について:(2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランを用いたO/N-トリフルオロメチルアルキル化反応を検討した結果、フェノール誘導体およびアニリン誘導体を用いてO/N-トリフルオロメチルアルキル化体の合成に成功した。[18F]-(2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランが合成できるようになることで、これらの標識化合物も合成できる見通しをつけられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) [18F]含フッ素オキシラン誘導体(CF3)の開発については目的の標識体は得られていないものの、必要な中間体([18F]CF3アニオン)は経由していることが明らかとなったので、条件を改善することで、目標を達成できると考えている。[18F]CF3アニオンの生成量も生成した[18F]CHF3の量から推察すると充分な量できていることから、問題となるプロトン源をうまく除去する条件を検討することで、目的の[18F]-(2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランが効率よく得られると考える。 (2) 求核性の高いCF3源として(phen)CuCF3の開発も検討したが、銅錯体を必要としない条件を検討することも視野に入れる。また、反応系内で発生した[18F]CF3アニオンがなるべく安定に存在する条件が必要であるため、今後はそのような条件下での反応を検討する。 (3) O/N-トリフルオロメチルアルキル化については目的化合物の合成が達成できたことから、同様の標識体は[18F]-(2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランを用いることで確実に合成することができると思われる。C-トリフルオロメチルアルキル化については引き続き反応の条件検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) C-フルオロアルキル化反応の検討:原料として使用するのは最も反応性の高かったB(dipropanolamine)誘導体を中心に検討する。検討において、金属触媒(CuIなど)を用いて、反応効率を向上させる他、塩基としてtBuOK以外にホスファゼン(P4-tBuなど)を用いてアリール基の求核性をあげる検討も併せて行う。 (2) [18F]-(2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランの合成検討:R3年度の知見を踏まえ、プロトンソースの出にくいジフルオロカルベン源を用いて検討を行う。また、反応系内でプロトンソースを除去するために求核性の低い強塩基を用いた場合についても検討する。また、使用するジフルオロカルベン源の使用量や使用する溶媒、反応温度を最適化し、効率的に[18F]-(2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランが合成できる条件を探索する。 (3) [18F]-(2,2,2-トリフルオロエチル)オキシランを用いて、C/O/N-[18F]トリフルオロメチルアルキル化を検討する。また、様々な置換基を持つ化合物についても検討し、官能基許容性についてどの程度本反応が利用できるかどうかを調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの拡大に伴い、一部業務内容の変更(テレワーク等)など実験可能な期間が制限されたことにより、当初想定した進捗では予定が進行しなかった。そのため、購入予定試薬が少額で賄えたことから、次年度使用額が生じた。 生じた次年度使用額の使用計画として、当初予定していた実験や新たに計画した実験に使用する試薬及び分析カラム等の購入資金に充てる予定。
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