研究実績の概要 |
先天性甲状腺機能低下症(CH)は約3,000出生に1名の頻度で認められ、単一遺伝子変異の発見率は約20%と低く、次世代シークエンサー(NGS)を用いても新たな疾患原因遺伝子が発見されることが少なくなってきている。NGS解析には解析対象の検体が揃うのに時間がかかること、効率がよくても1回あたりのコストが高いことの問題がある。 本研究では、新生児マススクリーニングにおいてCHと診断された児において、患者検体のリンパ球からg-DNAを採取し、甲状腺特異的なプライマーを使用したPCR法で増幅する。 一次スクリーニングではTSHR ; [ D403N, R450H, V473I, G498S ]、TG ; [C1264R ]、DUOX2 ; [ H678R ]、PAX8 ; [R31H, G23V]の部位をPCR法で増幅し、Sanger法によるシークエンスを行い疾患遺伝子の変異を同定する。 遺伝子スクリーニングで7/25例(28%)、NGSで20/25例(80%)に変異を同定した。CHの原因となるalleleを遺伝子スクリーニングで9allele、NGSで20allele同定した(網羅率45%) 。TSHRを同定した例で永続性CH (2/2例) 、DUOX2を同定した例で一過性CH (2/3例)を認めた。 遺伝子スクリーニングによるCHに関係する遺伝子の網羅率は1割程度だが、逆に疾患原因を構成するalleleの約45%を同定できた。 サンガーシーケンス法やPCRベースのジェノタイピングは、迅速でシンプルなワークフローであり、ある程度頻度の高い変異部位であれば迅速に検査結果を出すことができる。サンガー法により頻度の高い変異を最初に同定して、その後にNGS解析を行うことにより、コスト削減と新たな遺伝子変異の可能性を探ることができる。
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