研究課題/領域番号 |
20K08160
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
剣持 直哉 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 研究員 (00133124)
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研究分担者 |
上地 珠代 宮崎大学, 医学部, 准教授 (10381104)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リボソーム / 先天性貧血 / ゼブラフィッシュ / 疾患モデル / gata1 / p53 |
研究実績の概要 |
1)前年度に同定した新たなDBA原因候補遺伝子Xについて、これが疾患原因であるかどうかの検証を進めた。モルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)を用いたゼブラフィッシュ胚における造血能力の解析、X遺伝子のmRNAを用いたレスキュー実験などを行ったが、野生型と比べて有意な差は認められなかった。 2)研究協力者によるDBA患者の網羅的なエクソーム解析で、リボソームタンパク質(RP)遺伝子に新たな変異が複数同定された。そこで、ゼブラフィッシュ胚を用いてこれらの変異が真の原因であるかどうかを調べた。1アミノ酸置換のミスセンス変異であったため、MOによるノックダウンの後、変異を含むヒト型mRNAの注入で表現型のレスキューを試みた。現在進行中で、結果の検証を進めている。 3)DBAモデルのRNA-seq解析では、gata1など造血に関与する複数の遺伝子の翻訳効率が低下していた。そこで、前年度にDBAモデルとしての妥当性を確認できたrps19変異体を用いて、gata1 mRNAによるレスキュー実験を行った。rps19変異体の赤血球数が回復したことから、特定の遺伝子の翻訳調節がDBAの発症に関与する可能性が示された。 4)RP遺伝子の変異体またはp53との二重変異体を長期間飼育して発がんへの影響を調べた。DBAではがん化が促進されることが報告されている。そこで、変異体を長期間に渡って観察し、複数のケースでがん化が促進されていることを確認した。現在、組織化学的な手法などでがんの特性を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DBA患者で同定された複数の疾患候補遺伝子の解析をゼブラフィッシュで進めている。今後、新たな疾患原因の同定が見込まれる。rps19変異体を用いた解析により、造血に関与する転写因子の翻訳調節が、DBAの発症に重要な役割を果たしている可能性が示された。また、RP遺伝子の変異がゼブラフィッシュにおいてがん化を促進していることを確認した。以上のことから、研究課題はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
1)引き続き新規変異遺伝子の解析を進める。MOによるノックダウンおよびCRISPR/Cas9システムを用いた変異体の作製により原因遺伝子としての同定を目指す。 2)mRNAの翻訳調節に着目して疾患の発症機構を解析する。そのために、rps19変異体を用いたオミックス解析を進める。 3)RP遺伝子の変異とがん化との関連を解析する。そのために、発生したがんの性状およびがん化の条件(飼育環境、遺伝的背景)などを調べる。 4)rps19変異体を用いてDBAに有効な化合物の探索を進める。すでに同定した候補化合物の薬効の検証、最適化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ対策による県外移動の禁止や自宅待機などにより旅費や物品費などの使用が当初の予定通りには進まなかった。 使用計画:物品費として、研究を進めるための一般的な試薬・器具類の消耗品の他、ゼブラフィッシュの飼育に必要な物品、疾患モデルを作製するための合成オ リゴなどの経費に使用する。旅費として、学会へ参加するための費用を計上する。謝金として、研究を効率的に進めるための実験補助およびゼブラフィッシュの飼育・管理を行う要員の雇用に使用する。
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