研究実績の概要 |
本課題ではロングリードシーケンサーを駆使した疾患ゲノム解析法を確立し、既存の解析法で未解決の症例について遺伝要因を明らかにすることを目指している。ロングリードシーケンサーは20,000 bp以上の長いDNA配列を一本のリードで解読することで、既存の解析法で検出が難しい種類・サイズの病的変異、複雑な染色体構造異常の全体像を明らかにすることが可能である。しかし発展途上の解析技術でシーケンス後の情報解析系の確立が課題であった。 ゲノム解析法の構築:既存の解析法で未解決の25症例についてロングリード全ゲノムシーケンスを実施した。前年度までに確立したロングリード解析プログラム・パイプラインを適用することで5症例について疾患原因を同定する事ができた(解決率20%、5/25症例)。リピート伸長変異(3例)に加えて、コピー数変化を伴わないcopy neutralな構造異常(1例)、GC含量が高くエクソーム解析でシーケンス困難な領域に位置する欠失(1例)を明らかにした。いずれもロングリードを用いる事で初めて明らかにすることができた変異である。 エピゲノム解析法の構築:ロングリード解析では塩基修飾をシーケンス時に直接読み取ることが可能で、新たなエピゲノム解析法としての可能性を秘めている。DNA配列決定とDNAメチル化修飾の同時解析を可能にするロングリードゲノム・メチル化解析系を構築し、DNAメチル化解析プログラムmethylstatを公共デポジトリに公開した(https://github.com/bitsyamagu/methyl-stat)。この解析系を用いてリピート伸長変異がDNAメチル化異常を引き起こしエピジェネティックな制御を通じて疾患発症に関わる事を明らかにした。 以上、ロングリード全ゲノム解析法・エピゲノム解析法を構築し、臨床検体に適用することでその有用性を確認できた。
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