研究課題/領域番号 |
20K08169
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
田知本 寛 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (40256409)
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研究分担者 |
浦島 充佳 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80203602)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / 発症予防 |
研究実績の概要 |
我々は食物アレルギー発症の予防法を探索してきた。これまでに生後1日目より母乳に少量通常ミルクを加える場合と比較し、生後3日間は母乳栄養で不足の場合にはアミノ酸乳を与えることにより牛乳・鶏卵・小麦の食物アレルギー即時反応およびアナフィラキシー反応を10分の1にすることをランダム化臨床試験で証明した。さらに我々は「母親の加工肉等摂取除去(生後1ヶ月まで)による食物アレルギー発症ランダム化試験」を実施している。産科入院中の出生児には母乳を中心に不足分としてアミノ酸乳を与え、母親への食事介入が子どもの食物アレルギー発症予防になるか、そして臍帯血中の鶏卵・牛乳特異的IgG4濃度と食物アレルギー発症の関連性に注目した。本研究の目的は、「臍帯血中の食物特異的IgG4濃度が高いと食物アレルギー発症のリスクが軽減し、逆に低いとアレルギー発症に向かうため食物アレルギー発症リスクが増大する」という仮説を臨床試験探索研究として明らかにすることである。これまでの本研究に214名が登録された。2歳に到達した対象は167名でうち湿疹などのアレルギー症状を疑われた確認された児は97名であった。鶏卵・牛乳アレルギー症状を示した対象は鶏卵30名、牛乳3名であった。対象のうち124名に対し臍帯血中総IgG4を測定した(中央値24.3mg/dl)。150名の臍帯血中卵白、β-ラクトグロブリン、カゼイン特異的IgG4を測定した。各特異的IgG4値は中央値で3.9mg/ml, 0.8mg/ml, 1.0mg/mlであった。食物アレルギーの診断は食物負荷試験、加熱鶏卵・牛乳摂取による症状によって判断する。2歳時点での食物摂取による即時型反応の有無でIgG4値を比較したところ、2群間には差は無かった。中間解析であるが、母体から胎児に移行した食物に対するIgG4は児の食物アレルギー発症に関与していないことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当臨床研究は当院母親学級において本研究の説明を行い、同意を得られた母親と出生児を対象としている。2019年年末から感染拡大が世界中でおきている新型コロナウイスル感染拡大のため母親学級の開催が中止されたままである。登録増加のために、個別に研究の目的を理解し登録に同意を得られ患者増加を試みた結果、コロナ禍ではあったが新たな登録を得た。しかし、十分な登録患者数が得られる状況までには回復していない。今後SARS-CoV2感染が5類になり母親学級が再開されることを期待したい。
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今後の研究の推進方策 |
登録増加のために、研究概要を説明する動画を利用し、研究の目的を理解し登録に同意を得られ患者増加を試みている。新型コロナウイルス感染流行状況に応じて母親学級の開催が院内で許可され次第対面での説明を行い、登録者の増加を試みる。また、抗原特異的IgG4抗体は外注検査となっており、新型コロナウイスル感染流行状況に応じて発注する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
目標症例数300例に到達していないため、次年度使用となった。新型コロナウイルス感染症が5類になることで、母親学級が開催され我々から直接説明することにより研究への同意取得率アップが期待される。
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