研究課題/領域番号 |
20K08170
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
竹内 大二 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (40328456)
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研究分担者 |
羽山 恵美子 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00349698)
古谷 喜幸 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10424673)
中西 敏雄 東京女子医科大学, 医学部, 研究生 (90120013)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SCN5A / 早期発症LQTS / 疾患iPS細胞 / 心筋細胞 |
研究実績の概要 |
2021年度は、研究1「Nav1.5安定発現細胞を用い早期発症LQTS変異22種の電気生理学的解析」の実施のため、一昨年度に作製した18種のNav1.5変異遺伝子をもつ哺乳類発現プラスミドをそれぞれ293T細胞に導入し、ハイグロマイシン選択により、変異Nav1.5クローン株の樹立を進めた。 研究2の「Nav1.5安定発現株に制御タンパク質を共発現し電気生理の変化を検討」に関しては、2021年度は、Nav1.5とヒトα1シントロフィン、カベオリン3、Kir2.1の相互作用を検出する実験を進めた。昨年度クローニングしたα1シントロフィン、カベオリン3、Kir2.1を、N末にGFP融合蛋白質として発現する哺乳類発現型のプラスミドに挿入し、Nav1.5野生型及びR1623Q変異を恒常的に発現する293T細胞にそれぞれ導入した。すると、シントロフィン、カベオリン3の発現は、Nav1.5野生型293T細胞では顕著に亢進し、R1623Q変異型293T細胞では抑制された。 研究3のNav1.5の「R1623Q iPS細胞2検体由来iPS細胞を心筋細胞に分化し機能解析と生化学的分析を行う」に関しては、健常者並びに患者iPS細胞を浮遊法により心筋分化させ、発現遺伝子の変動やMED64による機能解析実験を進めた。その結果を「Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Cardiomyocytes with SCN5A R1623Q Mutation Associated with Severe Long QT Syndrome in Fetuses and Neonates Recapitulates Pathophysiological Phenotypes」というタイトルの論文にまとめ、MDPI Biology誌に投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究1:Nav1.5安定発現細胞を用い早期発症LQTS変異22種の電気生理学的解析」に必要な変異Nav1.5発現プラスミド18種を2020年度にまでに作製した。2021年度はこれらの変異Nav1.5発現プラスミドを293T細胞に導入し、恒常発現細胞株化を進めた。これまでに、2変異(R1623Q, E1784K)で細胞株化を完了し、電気生理実験を実施した。10変異については、クローン細胞株を複数得た。 「研究2:Nav1.5安定発現株に制御タンパク質を共発現し電気生理の変化を検討」のために、2021年度は、Naチャネルβサブユニット1, 2, 3, 4、α1シントロフィン、カベオリン3、Kir2.1 をAcGFP融合タンパク質として発現するプラスミドを作製した。これらをNav1.5安定発現株(野生型及びR1623Q変異型)及び293T細胞に導入し、GFP発現を観察した。複数のターゲット遺伝子では、293T細胞の場合と比べて、野生型Naチャネル細胞では発現の亢進、R1623QNaチャネル細胞では発現の抑制が観察された。Naチャネルとターゲット蛋白質間の蛋白質相互作用について、これらのNav1.5安定発現株が極めて有効であることが示唆された。 「研究3:R1623Q iPS細胞2検体由来iPS細胞を心筋細胞に分化し機能解析と生化学的分析を行う」に関しては、これまでの実験結果を総括して論文とし、MDPI Biology誌に投稿・掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
研究1の「Nav1.5安定発現細胞を用い早期発症LQTS変異22種の電気生理学的解析」の推進のために、2022年度は、残りのNav1.5変異安定発現293T細胞株の作製を続行し完成させる。これらの細胞を用いて、オートパッチクランプ法によるNa電流の測定を進めることにより、野生型と変異型のNav1.5の違いを電気生理学的に明らかにする。 研究2の「Nav1.5安定発現株に制御タンパク質を共発現し電気生理の変化を検討」の推進のために、2021年度は、Naチャネルβサブユニット1, 2, 3, 4、α1シントロフィン、カベオリン3、Kir2.1の制御候補遺伝子を、ピューロマイシン選択型哺乳類発現ベクター及び2遺伝子を共発現できるpIRES哺乳類細胞発現ベクターにサブクローニングし、Nav1.5と共発現するHEK293細胞の構築を進め、免疫沈降法を用いて、生化学的に変異Nav1.5との相互作用の検出を行う。 研究3の「R1623Q iPS細胞2検体由来iPS細胞を心筋細胞に分化し機能解析と生化学的分析を行う」は、2021年度に論文化できたので、実質完了しているが、引き続き、健常者とNaチャネル等の変異をもつ患者iPS細胞由来分化心筋細胞を用い、マルチ電極アレーシステム(MED64システム)を用いた電気生理学的特性の解析を行う。心電図のQT 間隔に該当する細胞外電位や拍動頻度を計測し、チャネルの変異によるQT 間隔延長などの評価を行う。薬理学的研究にもMED64 システムを用い、分化心筋細胞に様々なβ遮断薬・Na 遮断薬を種々の濃度で添加し細胞外電位等を測定し、その効果から患者に有効な治療薬の選択のための資料とする。
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