研究課題/領域番号 |
20K08181
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
漆原 真樹 徳島大学, 病院, 講師 (50403689)
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研究分担者 |
香美 祥二 徳島大学, 病院, 病院長 (00224337)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アンジオテンシン / インシュレーター / 糸球体上皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は転写調節因子であるCTCFにより制御される腎内レニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin system: RAS)活性化による糸球体上皮細胞障害の病態機序を解明し、新たな治療法を開発することである。RASは全身の血圧調節のみならず慢性腎臓病の進展に関与しており、RAS阻害薬は腎障害の進行を抑制する目的で広く用いられている。研究代表者らは小児腎病態における腎内RAS活性化の病態機序について研究を続けてきた。本研究ではインシュレーターの構成タンパクであるCTCFに着目し、糸球体上皮細胞に強い影響があるRAS活性化によるこれまでにない転写因子を介した糸球体上皮細胞障害の病態機序解明や新しい治療法の開発を目的とする。そのために糸球体上皮細胞特異的にCTCFをノックダウンした動物モデルを作製し、RAS活性化による糸球体上皮細胞障害がCTCFによってどのように調節されているのかを明らかにすることを具体的な目標とする。研究代表者らの最新の研究でインシュレーターの構成蛋白の一つであるCTCFを糸球体上皮細胞特異的にノックアウトしたマウスを作製したところ上皮細胞の虚脱変化による糸球体障害を認めるというたいへん興味深い知見を得た。本研究では遺伝子間の相互干渉を防ぐ仕組みであるインシュレーターの糸球体上皮細胞における役割を解明し腎内RAS活性化による蛋白尿の新たな病態機序を明らかにすることにより効果的な治療法を探求する。当該年度は糸球体細胞障害について電子顕微鏡解析による、より詳細な上皮細胞障害の形態観察、さらにネフリン、ポドシンなどのスリット膜関連分子の発現変化を検討した。その結果、電子顕微鏡では広範な糸球体上皮細胞の足突起の消失が見られた。さらにネフリン、ポドシン発現の著明な低下が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は糸球体上皮細胞特異的CTCFノックアウトマウスの糸球体障害機序の解明が目標である。NPHS2遺伝子改変マウスとCre-recombinase遺伝子導入マウスを交配させ糸球体上皮細胞特異的CTCFノックアウトマウスを作製した。その結果、上皮細胞の虚血性変化による糸球体障害や半月体を呈していた。電子顕微鏡による詳細な形態変化やネフリン、ポドシンなどのスリット膜関連分子の発現強度が確認できたことから本研究を進めていく上で有用なデータが揃いつつあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は腎障害に強く関与している腎臓内RAS活性を評価するためアンジオテンシノーゲンの発現やアンジオテンシンIIを測定し、本モデルにおける糸球体上皮細胞障害機序との関連を検討する。さらにヒトの慢性腎臓病の治療に広く用いらているRAS阻害薬による治療効果を観察し糸球体上皮細胞障害がどのように改善するのかを形態変化とともにネフリンやポドシンのスリット膜関連分子の発現強度と合わせて調べる。
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