研究課題
Sotos症候群 (SoS) は、知的障害を伴う過成長症候群である。原因遺伝子は、ヒストンH3リジン36メチル化酵素をコードするNSD1遺伝子であり、そのハプロ不全によって発症する。過去にNSD1のノックアウトマウスが作製された。しかし、ハプロ不全に相当するヘテロ欠損マウスの表現型は正常であり、一方、ホモ欠損マウスは胚性致死を示した。つまり、現在のところ、SoSのモデルマウスは存在しない。そこで、大脳皮質、海馬でNSD1をコンディショナルにノックアウトした(Nsd1 cKO) SoS知的障害モデルマウスを作製した。【行動表現型解析】Nsd1 cKOマウスは学習記憶に障害があることが分かった。【ヘマトキシリン染色による組織学的解析】Nsd1 cKOマウスは歯状回が小さく、左右の交連がより吻側側で消失していた。【免疫組織化学染色】Nsd1 cKOマウスの大脳皮質において、皮質層構造に乱れが生じていた。また、海馬の神経新生は、Nsd1 cKOマウスで有意に減少していた。これらの結果は、Nsd1 cKOマウスがSoS知的障害モデルマウスとして使用できる可能性を示している。また、海馬の神経新生は、学習記憶と密接な関係がある。海馬の神経新生は、神経幹細胞、intermediate progenitor cell、神経芽細胞、未成熟神経細胞、成熟神経細胞と一連の分化を経て達成される。今後、分化異常がどの細胞段階で起きているか、なぜその異常が起きるのか、その分子メカニズムを明らかにする。
3: やや遅れている
ある程度、実験計画どおり進み、Nsd1 cKOマウスに生じる異常を把握できている。しかしながら、統計解析できるほど、コントロールとNsd1 cKOマウスを確保できていない部分がある。今後、解析個体数を増産する。
海馬の神経新生がなぜ障害されるのかを分子レベルで解明する。免疫組織化学染色、抗H3リジン36メチル化抗体を用いたクロマチン免疫沈降法、網羅的DNAメチル化解析や遺伝子発現解析を用いて、Nsd1の下流に存在する標的遺伝子を同定し、SoSにおける知的障害発症メカニズムを明らかにする。
実験がやや遅れているため、購入予定の物品を購入していないものがある。今後、昨年度に遅れた実験計画と今年度の実験計画に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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