研究課題/領域番号 |
20K08183
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
東元 健 佐賀大学, 医学部, 准教授 (30346887)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Sotos症候群 / Nsd1 / モデルマウス / 海馬成熟神経 |
研究実績の概要 |
Sotos症候群(SoS)は、知的障害を伴う過成長症候群である。原因遺伝子は、ヒストンH3リジン36メチル化酵素をコードするNSD1遺伝子である。現在のところ、SoSのモデルマウスは存在しない。そこで、大脳皮質、海馬でNsd1をコンディショナルにノックアウトしたSoS知的障害モデルマウス(Nsd1cKO)を作製した。今年度の研究成果を以下に記す。 【MRI解析 (2D解析】コントロールに比べて、Nsd1cKOでは、1)脳梁の頭尾長が短く、脳梁膨大部が薄い、2)海馬の面積が小さい、3)側脳室体部が拡大し、側脳室三角部が吻尾方向に拡大している、4)見た目に明らかな大頭症を認めないように、脳と皮質の面積に顕著な差は認められない。 【全DNAメチル化シークエンス】adultの海馬成熟神経核を用いて、EM-seqを行った。コントロールに比べて、Nsd1cKOでは、1)遺伝子間領域で低メチル化が起きている、2)遺伝子領域では遺伝子によっては高メチル化を示す。 【RNA-seq】adultの海馬成熟神経核を用いて、RNA-seqによる遺伝子発現解析を行った。コントロールに比べて、Nsd1cKOでは、1)1549個の遺伝子の発現が上昇し、908個の遺伝子が発現低下を示す、2)GO解析で、発現異常を示した遺伝子は発生や神経に関連するものが多く認めらる。 このように、Nsd1cKOはSoSのように大頭症を示さないが、側脳室三角部の拡大や脳梁未発達がSoS同様に認められる。このことは、このマウスがSoS知的障害モデルマウスとして使用できる可能性を示している。今後、海馬成熟神経核を用いたヒストン修飾に対するChIP-seqを行い、DNAメチル化との関係を明らかにし、遺伝子発現の異常メカニズムを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ある程度、実験計画どおり進み、Nsd1cKOマウスに生じている異常を把握しつつある。しかしながら、前年度に見出した、海馬神経新生の異常メカニズムに関しては、統計解析ができるほど、マウスの数を確保できないでいる。現在、マウスの数を確保するために、交配を積極的に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 学習と記憶に大きく関与することが知られている海馬神経新生が、なぜ障害されるのかを分子レベルで解明する。2)海馬成熟神経核を用いたヒストン修飾に対するChIP-seq行い、前年度に得られた全DNAメチル化シークエンスとRNA-seqのデータと統合することにより、ゲノムレベルでのSoSにおける知的障害発症メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究がやや遅れているため、試薬の購入等の必要がなかった。今年度はその遅れを取り戻すために、遅れた分と今年度の予算を消費する予定である。
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