研究課題
発達途上の脳における乳酸やケトン体などモノカルボン酸の重要性が指摘されている。代表者が見出した乳酸代謝促進分子LRPGC1は好気的代謝制御因子PGC1αのバリアントであり広い脳領域に発現する。LRPGC1の神経系における役割を解析するため,バリアント特異的なノックダウン系の構築を検討したものの,塩基配列の特性からshRNAの使用が難しいことが判明した。従って,まずドミナント・ネガティブ体などを活用した発現系を構築し,初代培養ニューロンなどで形態変化などの基礎データを得ることとした。解析対象遺伝子が発現するニューロンを可視化するため,pBI系ベクターの双方向発現システムを用いた。このベクターでは2つのプロモーターのうち一方(minCMV1)により解析対象遺伝子が発現し,もう一方(minCMV2)により蛍光タグ(ZsGreenなど)が発現する。本年度は,これまでに明らかにした乳酸代謝を促進するシグナル経路の神経系における役割を解明するために,LRPGC1,その相互作用因子であるエストロゲン関連受容体(ERR)γ,ERRγと相互作用できないLRPGC1の変異体(LKKAA/AAKYL),PGC1α,LRPGC1/ERRγシグナルの標的遺伝子であるミトコンドリア転写因子A(TFAM)などの配列をpBI系ベクターに挿入し,細胞内での発現を確認した。また,前述のERRは3つのサブタイプを持つオーファン核内受容体であるが,エネルギー状態の変動に伴う細胞内動態変化を新たに捉えたため,現在そのメカニズムと生理的意義を解析中である。更に,タンパク質の動態や相互作用を可視化するFRAP/FRET系を構築するためフィルターユニットなどを購入した。今後,エネルギー状態に依存した核内受容体など転写因子‐転写共役因子間の動態・相互作用の変化を解析し,初代培養ニューロンへの外挿を試みる。
3: やや遅れている
本年度4月1日付で代表者が所属機関を異動し,研究環境の整備に時間を要したため。
・乳酸代謝を促進するシグナル伝達経路の神経系における役割の解析・細胞内エネルギー状態に依存した転写因子/転写共役因子の核-細胞質間移動のメカニズムならびに生理的意義の追究・FRAP/FRET法を活用した生細胞イメージングによるニューロンにおける代謝系制御因子の動態ならびに相互作用の可視化
代表者が本年度,京都府立医科大学から大阪府立大学へ異動し新たな教室で研究環境を整えるのに時間を要し,実験を当初の予定ほど行えなかった。このため消耗品をあまり消費せず,残余額を次年度に使用することとした。
大阪公立大学の新たな教室ホームページは現在作成中である。
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http://www.vet.osakafu-u.ac.jp/anat/