研究課題/領域番号 |
20K08191
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
齋木 宏文 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (50813797)
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研究分担者 |
黒田 英克 岩手医科大学, 医学部, 特任准教授 (70382596)
塩畑 健 岩手医科大学, 医学部, 助教 (60802410)
小山 耕太郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (80170398) [辞退]
中野 智 岩手医科大学, 医学部, 助教 (40748638)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フォンタン手術 / フォンタン関連肝障害 / 単心室 / 先天性心疾患 / 心不全 |
研究実績の概要 |
フォンタン手術の導入により、重症先天性心疾患児はチアノーゼのない長期生存が可能となった。一方、術後遠隔期には種々の末梢臓器障害を発症することが明らかとなり、慎重な循環管理により良好なFontan循環を維持することの重要性が指摘されている。特にFontan関連肝障害 (FALD)は高度心不全に至る前病変の可能性が指摘され、早期検出とその予防が重要な課題であるが、FALDを鋭敏に検出する生体指標が無いことが、予防や早期治療の障壁となっている。我々はFontan術後に施行する心臓カテーテル検査中に評価した簡便な肝循環動態指標が、肝線維化をはじめとする肝障害を反映するという仮説を立てた。本研究では定期健診の際に評価した肝循環動態指標が、早期の肝障害を鋭敏に反映するか、また遠隔期の肝障害進展を予測しうるかを検証する。更に詳細な心臓・血管機能評価を介して、フォンタン循環における心血管特性がFALDの病態に与える影響を明らかにし、フォンタン術後管理指針を提案する。
本研究に先立ち、定期心臓カテーテル検査の際に、肝循環動態指標を評価し、定期的な循環・肝機能障害指標、末梢臓器障害指標の経過観察を行うシステムを構築した。2020年度の予備研究では安定した肝血流量推定が困難な症例が少なくないことが明らかとなったため、2021年度からは光トポグラフィ技術(NIRS)を用いた別の指標での非侵襲的肝循環動態評価を並行して開始しており、2022年度に解析を進める予定である。
研究開始以前にデータが得られている症例の非侵襲的循環・肝機能障害指標の評価・フォローアップは従来同様継続し、本検討に必要な症例数に到達次第解析を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の基盤となるデータ収集タイミングが、定期健診としての心臓カテーテル検査であるため、昨今のCOVID19の流行および感染対策に伴う検査制限に強く影響をうけ、2020年度に予定していた予備検討に遅れが生じた。2021年度は7月頃より検査制限を緩和することができたが、全体に症例集積に遅延が見られ、予備検討の解析が2021年度までずれ込んだため、研究全体としての遅れにつながっている。
また肝循環動態の客観的評価のために、安定した肝血流量指標の確立が重要と考えているが、2020年度の予備研究の方法では解析に足るデータが得られる症例が不充分であり、並行して別の生体指標を導入し研究を継続している。
循環指標測定のために当初予定していた計測機器が発売中止となったため、代替機器の購入を目指したが、COVID-19に関連した部品入荷の遅れにより製造が遅延し、入荷が2022年度となったことも研究の遅れの一因である。
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今後の研究の推進方策 |
想定していた肝血流量指標の信頼性がやや低いことが予備データで示されたため、肝機能検査として用いる色素を利用した肝血流量評価の応用・導入を検討している。購入を予定していた測定機器の代替機種が2021年度末に製造され、2022年度に納入される予定である。COVID-19の影響により遅延していた症例の登録を順次行い、当初計画していた早期FALDおよびFALD増悪を予測しうる生体指標としての肝循環指標の役割を明らかにする解析を継続する。
一部の血行動態指標がFALDを反映する可能性が示唆される予備データが得られているため、カテーテル検査時に得られる肝循環指標だけでなく、光トポグラフィ技術(NIRS)を用いた非侵襲的肝循環指標を独立変数に加え、肝障害や心血管機能指標との関連を合わせて解析し、生体指標としての有用性も合わせて検証していくことを計画している。
また、全体として研究に遅れが生じているが、この間の中間解析で、"FALD発症から血清学的マーカーの変化に至る中間プロセス"を指標とした、新しいFALD検出のための生体指標の可能性が示されたため、この指標についても解析に加えていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は予備検討の結果および検討結果のディスカッションを目的に国内外の学会に参加する予定であったが、COVID19に伴う渡航制限・施設内規則等により参加することができなかった。 同様の事由により検査数が減少したために解析ソフト・試薬および検体容器等の購入時期も一部が2021年度にずれ込み、その影響で一部が更に2022年度にずれ込んでいる。解析ソフト・検体処理に関連した測定キット等購入を予定する物品は決定しているが、アップデートや品質保証期間の関連で、購入を見合わせており、各種データがそろってきた段階で購入する予定としている。 更に2022年度は学会での報告とディスカッションは本研究において非常に重要な位置づけとなるため、出席を予定している。雑誌への投稿に関連した英文校正費・掲載費等必要経費が多くかかるものと見積もっており、計画的な支出を心掛ける。
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