研究課題/領域番号 |
20K08197
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
西尾 久英 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (80189258)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脊髄性筋萎縮症 / 乾燥血液濾紙 / SMN1遺伝子欠失 / SMN1遺伝子内変異 / 保因者 |
研究実績の概要 |
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、日本においても非常に頻度が高い遺伝性運動ニューロン病である。これまで臨床診断が困難で、治療法もないことから、誤診例、診断遅延例、未診断例が多かった。最近、アンチセンス製剤、遺伝子導入ベクター製剤等の有効な薬剤が開発され、治験に参加したSMA患者の生命予後と運動予後は有意に改善した。今後、すべてのSMA患者にこのような有効な治療法を提供するためには、正確で、迅速な診断システムが必要である。本プロジェクトの目的は、新鮮血あるいは乾燥濾紙血を用いて、SMAの分子遺伝学的診断検査体系(以下、SMA検査と略す)を構築することである。 (1)SMN1遺伝子欠失に関する検査 SMA患者の95%は、SMN1遺伝子欠失のホモ接合体である。このことを利用して、SMA検査の第一段階としてSMN1遺伝子欠失の有無を調べた。2020年度は、SMAが疑われる患者の乾燥濾紙血と新鮮血液を用いてSMN1遺伝子欠失検査を行い、これらの検体の結果が一致することを確認した。 (2)SMN1遺伝子欠失スクリーニング法の開発 乾燥濾紙血を用いた新規スクリーニング法を開発し、論文発表を行った。この方法は、(1)で用いた方法とは全く異なる。 (3)SMN1遺伝子欠失保因者スクリーニング法の開発 SMN1遺伝子欠失患者の両親は、SMN1遺伝子欠失の保因者である。乾燥濾紙血を用いた保因者の新規スクリーニング法を開発し、論文発表を行った。 (4)SMN1遺伝子内変異に関する検査 SMA患者の5%は、SMN1遺伝子内に微小変異を有する。SMA検査の第二段階としてSMN1遺伝子内変異の有無を調べた。2020年度は、SMN1遺伝子内変異を検出するアルゴリズムを構築し、論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)SMN1遺伝子欠失スクリーニング法の開発 乾燥濾紙血を用いた新規スクリーニング法を開発し、論文発表を行った。 (2)SMN1遺伝子欠失保因者スクリーニング法の開発 SMN1遺伝子欠失患者の両親は、SMN1遺伝子欠失の保因者である。乾燥濾紙血を用いた保因者の新規スクリーニング法を開発し、論文発表を行った。 (3)SMN1遺伝子内変異に関する検査 SMA患者の5%は、SMN1遺伝子内に微小変異を有する。SMA検査の第二段階としてSMN1遺伝子内変異の有無を調べた。2020年度は、SMN1遺伝子内変異を検出するアルゴリズムを構築し、論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)私たちが開発した新規SMN1遺伝子欠失スクリーニング法を実臨床に応用する。 現行のSMN1遺伝子欠失スクリーニング法の弱点(偽陽性発生率が高いこと)を補うために、今回私たちが開発した方法論をバックアップの方法論として導入するように、検査施設に働きかける予定である。 (2)私たちが開発した保因者スクリーニング法を用いて、日本の保因者頻度を明らかにし、患者数を推定する。 SMN1遺伝子欠失の保因者は50~100人に1人とされているが、実際の数はいまだ不明である。最近開始されたSMA新生児スクリーニング検体を用いれば、日本の保因者の頻度をかなり正確に推定される。このことは、未診断のSMA患者を見つけ出し、治療につなげるために必要な公衆衛生学的な基礎資料となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
注文していた研究試薬が、今年度中に納品されなかったため、その費用が次年度に持ち越されることになった。
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