レット症候群(RTT)は、MeCP2遺伝子変異を主因とし、主に女児に発症する神経発達障害であり多様な神経症状を特徴とする。中でも、80%以上の患者に合併する 睡眠 障害は、本人のQOL低下に加え、介護者の負担を増加させ、臨床における問題の一つである。 本研究は、MeCP2遺伝子を欠損したRTTモデルマウスを用いて、睡眠障害の病態における体内時計、概日リズム、睡眠・覚醒制御システムの役割を解明し、 睡眠障害をはじめとするRTTの病態メカニズムに迫るとともに、 睡眠・覚醒制御システムの調節による治療の可能性を調べることを目的としている。前年度までに、RTTモデルマウスの睡眠リズム、睡眠時間に大きな異常は認められない一方で、睡眠と覚醒が激しく入れ替わる睡眠(覚醒)の断片化やREM睡眠の割合の低下が認められることを見出した。また、視床下部、脳幹における睡眠関連遺伝子の発現解析により、オレキシン受容体シグナルに着目し、マイクロダイアリシス法によりオレキシンアゴニストに対する反応性を調べたところ、野生型マウスに比較して弱く、オレキシンシグナルの睡眠覚醒病態への関与が示唆された。本年度は、これらのデータをまとめつつ、 REM、 NREM睡眠の制御に関わることが示される遺伝子の発現を前頭前野、視床下部、脳幹において解析し、関連遺伝子の発現変化が認められたアセチルコリン神経伝達と睡眠異常の関連について調べている。
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