我々がこれまでに当研究所で蓄積してきた神経芽腫研究に関する知見と、研究室が確立しているゲノム解析技術を駆使し、神経芽腫細胞株におけるミトコンドリアの異常の同定と、これらが『自然退縮』へと繋がるBMCC1依存的なミトコンドリア経路の細胞死に与える影響の理解およびBMCC1の発現低下と協調した神経芽腫悪性化機構の解明を目的として本研究を実施した。最終年度は、「項目1:神経芽腫細胞株におけるミトコンドリア遺伝子変異の網羅的同定」と「項目2:BMCC1がミトコンドリアの恒常性維持に関わる分子メカニズムの探索」の研究について推進した。項目1:前年度までに18種類の神経芽腫細胞株に対して実施した、次世代シークエンサーを用いたミトコンドリアDNAの網羅的解析から、各神経芽腫細胞株が保有するミトコンドリア遺伝子内の一塩基多型を同定した。そのうち、病因性が予想される一塩基多型を公共データーベースの情報をもとに特定した。さらに本研究成果を纏めるとともに、実際の神経芽腫症例におけるミトコンドリアDNAの網羅的な変異解析研究に向けた足掛かりをつくった。項目2:前年度までに実施した、BMCC1をノックダウンした神経芽腫細胞株の網羅的な遺伝子発現解析より取得したデーターの分析を進め、神経芽腫悪性化におけるBMCC1の機能解明を進めた。さらに、BMCC1ノックアウトマウスの副腎について網羅的な遺伝子発現解析を行い、BMCC1の発現低下がもたらす遺伝子発現変化の特徴を捉えた。以上の解析を統合し、神経芽腫悪性化との関連が想定されるパウウェイを絞り込んだ。なお、本研究の基盤となる網羅的なゲノム解析技術を活用したがんのゲノム解析研究を推進し、共同著者として3件の学術論文を発表するとともに、筆頭演者として1件、共同演者として1件の国内学会発表を行った。
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