研究課題
Phactr1はウエスト症候群患者より遺伝子変異が同定された遺伝子であり、これまでに変異タンパク質の性状解析や大脳皮質形成に及ぼす影響について解析してきた。これまでの結果を踏まえて本研究では、PHACTR1変異の臨床的意義に焦点を絞り、患者由来リンパ芽球の生化学・細胞生物学的解析、結合する分子群(Protein phosphatase 1、KCNT1(小児てんかん性脳症の原因遺伝子))との相互作用等の解析により、ウエスト症候群の分子病態メカニズムの一旦を解明することを目的とする。本年度は健常者由来3株と患者由来2株のリンパ芽球を樹立し、性状解析を行なった。リンパ芽球を通常培養しウエスタンブロッティングによりPhactr1の定量を行なったところ、発現量に差は見られなかった。また細胞分画を行い細胞質と核での発現量を比較したがコントロールと同様であった。これについては抗Phactr1抗体を用いた免疫染色でも同様の結果であった。また血清を抜いた培地で一晩培養し、Phactr1抗体を用いた免疫染色を行なったが局在に違いは見られなかった。Phactr1はG-アクチンと相互作用する為、免疫沈降により内在性Phactr1とG-アクチンとの結合能を比較したが、有意な差は確認されなかった。これはCOS7細胞での過剰発現系を用いた結果とは異なっており、今後検討が必要である。またin utero electropolationにより大脳皮質神経幹細胞でPhactr1を発現抑制するとそこから誕生する神経細胞の移動が障害されるが、KCNT1を発現抑制すると同様に神経細胞移動が障害された。
2: おおむね順調に進展している
患者由来リンパ芽球の樹立が完了し、様々な解析が可能となっている。KCNT1についてもin vivo解析ができるベクターの作成が完了し、in vivo解析を開始している。
患者由来リンパ芽球を用いた内在性Phactr1とG-アクチンとの結合能はCOS7細胞での過剰発現系を用いた結果とは異なっていたため、実験系を変更して解析する予定である。またPHACTR1とKCNT1の結合ドメインの同定、PHACTR1変異がKCNT1との相互作用や細胞内局在に及ぼす影響のin vitro解析を行う。また、PHACTR1やKCNT1の機能阻害による大脳皮質ニューロンの移動障害が相方の過剰発現でレスキューされるかを子宮内胎仔脳遺伝子導入法を用いて検証する。
実験計画の内容が前後し、in vitro解析を先に行い、in vivo解析を後に回したため。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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https://www.pref.aichi.jp/addc/eachfacility/hattatsu/department/index4.html