研究実績の概要 |
ダウン症では新生児の5~10%に一過性骨髄異常増殖症 (TAM) という白血病に似た疾患が発症する。多くは自然寛解するが、約20%は白血病 (ML-DS) へ進展する。 この特異な経過は白血病発症のメカニズムを解明する上で重要だと考えられる。我々は, TAMとML-DSの遺伝子解析を行い、TAMはトリソミー21とGATA1遺伝子の変 異により生じ、ML-DSへの進展には、これにコヒーシンやエピジェネティック制御因子などの変異が加わることを明らかにした。本研究では、進展に関わる変異 の中で、RUNX1遺伝子変異に注目した。RUNX1遺伝子は21番染色体にあり、二量体で働く転写因子CBFのサブユニットをコードする。2つのプロモーターと選択的スプライシングにより, 3つのアイソフォーム AML1a、AML1b、AML1cが存在する。AML1aとbは造血の全体(胚型・成体型)で機能し、AML1cは成体型造血で機能する。 我々が発見した変異は AML1c特異的なもので、DNA 結合などに関わるRUNTドメインを含む部分を重複する、部分タンデム重複 (PTD)変異であった。これは、ML- DSの20%ほどで認められた。RUNX1と、二量体のパートナーであるCBFβの異常による白血病は, CBF-急性骨髄性白血病 (AML) としてカテゴライズされ、小児の AMLの25%、成人の15%を占める。しかし、これらには PTD変異は報告されていない。本研究の目的は、新たに見つかったRUNX1変異体の白血病発症に関わる機能を 明らかにすることである。具体的には、(1) RUNX1-PTDによって発現が変動する遺伝子群を明らかにすることや、(2) RUNX1-PTD のゲノム上の認識領域を決定 し、野生型や既報の変異体と比較すること。そして、(3) RUNX1-PTD ノックインマウスの解析をすることである。
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