研究課題/領域番号 |
20K08203
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
竹下 敏一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60212023)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝子多型 / 川崎病 / IL-4 / IL-2 / IVIG療法 / 冠動脈瘤 |
研究実績の概要 |
川崎病は免疫グロブリン(IVIG)大量療法とアスピリンの併用により、冠動脈病変が20%から2.3%へと減少したが、依然として先進諸国の小児の後天性心疾患の第1位である。冠動脈病変と強い相関を示すのは、IVIG不応答例である。従って、より早くIVIG不応答患者を検出して強化療法を行うのが重要である。申請者はIVIG不応答例に関わるオッズ比の高い遺伝子多型を同定して、IVIG不応答診断のマーカーとしての有効性を確立することを目的とする。さらに、同定したIVIG不応答例に関わる遺伝子について、治療に向けた情報収集の点から、発現や機能の解析を行う。 30人分の2回IVIG治療抵抗性患者のリンパ球から抽出したDNAを用いてエクソーム解析を行った。1000ゲノムプロジェクトとの比較でオッズ比が4以上、minor allele frequency (MAF)が0.04以上を抽出(1883個)、さらに免疫関連分子であるもの(437個)を抽出、最終的に197個を候補として選んだ。この197個のvariantを含む領域を次世代シークエンサーで読み、確認できたものをさらに個別にシークエンスした。その結果得られたvariantは、第1番目として30人中3人(1000ゲノムプロジェクトあたり20人)、第2番目として30人中4人(1000ゲノムプロジェクトあたり5.9人、オッズ比25.8、p=0.0000448)、第3番目として30人中2人(1000ゲノムプロジェクトあたり1.78人)などが見出された。第1番目の遺伝子多型は、転写因子、Junの、第2番目はSmurf2の遺伝子座に位置した。さらに候補としてPMAIP1、NCK1、WNT2、BCAN、MAPK9、ANGPTL4を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は長野県下において、2回の IVIG療法に不応答な患者を集めた。2回の IVIG療法に不応答な患者は川崎病全体の4~6%で、対象となる患者は少ない。そこで全国の川崎病コホートより、2回のIVIG療法不応答患者を集め、 rs563535954を検証する予定であったが、2020年からのコロナ禍で患者を対象とした本研究の遂行は困難な状態にある。2021年も状況は変わっておらず、現在手持ちのサンプルで解析を続けている。また、IVIG不応答例に関わる候補遺伝子について発現や細胞内動体の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍によりコホート研究は困難な状況であるので、現在手持ちのサンプルを中心に解析を行う。一方、川崎病の炎症反応に、既にIVIG療法に不応答な遺伝子多型として同定したIL-4レセプターと、炎症反応を促進しているサイトカインの1つとしてIL-2の関与が考えられる。IL-4レセプターとIL-2レセプターはシグナル伝達においてJak3キナーゼを共に利用している。我々はIL-2レセプターの種々の抗体やIL-2レセプターとJak3キナーゼとの会合条件などの情報を持っていることから、IL-2レセプターの細胞内動体を解析する。即ち、この2つのレセプターは同様の細胞内動体やシグナル伝達系を有している。従って、IL-2レセプターのシグナル伝達や動体の解析は、IL-4レセプターの解析につながるばかりでなく、川崎病における炎症反応の亢進予防にも重要な情報をもたらす。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により2回のIVIG療法不応答患者を集めることが困難となり、 次年度使用が生じた。次年度使用額は令和3年度請求額と合わせて、消耗品として使用する予定である。
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