研究課題/領域番号 |
20K08203
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
竹下 敏一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (60212023)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝子多型 / 川崎病 / IL-4 / IL-2 / IVIG療法 / 冠動脈瘤 |
研究実績の概要 |
コロナ禍によりコホート研究は困難な状況であるので、病態に関わると考えられている遺伝子の機能面の解析を行った。 川崎病の炎症反応に、申請者がIVIG療法に不応答な遺伝子多型として同定したIL-4レセプターと、これまで川崎病関連遺伝子多型として報告されているIL-2、IL-6、IL-10、IFN-γ、TNF-αの関与が考えられる。川崎病の発生機序が容易に解明されない原因に炎症に関わるサイトカインの二面性が推察される。IL-2は生体防御を担うと同時に、制御性T細胞により免疫抑制機能にも関与する。IL-2による炎症反応と免疫能のバランスの制御機構解析を目的として、NK活性、障害性Tリンパ球(CTL)活性とそれと拮抗する制御性T細胞活性について検討した。 免疫抑制に関わる制御性T細胞の活性化には高親和性IL-2レセプターのα鎖、β鎖、γ鎖の3つのレセプターが関与し、細胞性免疫のCTLやNK細胞の活性化には中親和性IL-2レセプターの2つのレセプターβ鎖、γ鎖が関与する。そこでα鎖に結合能の無い変異IL-2を作製して担癌マウスに投与、抗腫瘍効果で制御性T細胞活性、及びCTL活性を評価した。作製したIL-2変異体の中でMK-6(K35A/R38A/K43A/Y45A)はCD8陽性細胞障害性Tリンパ球の増殖を促進したが、CD4陽性制御性T細胞の増殖はほぼ見られない。同時に通常のIL-2投与において観察される血管内皮細胞障害による浮腫も認められない。さらにマウス大腸がん細胞CT26の腫瘍の増殖抑制が観察された。これらの結果より、IL-2による炎症反応にα鎖を含む高親和性IL-2レセプターが関与していることが示され、川崎病における炎症反応にも関わることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年からのコロナ禍で患者を対象とした本研究の遂行は困難な状態にある。2021年も状況は変わっておらず、現在手持ちのサンプルで解析を続けている。また、IVIG不応答例に関わる候補遺伝子について発現や細胞内動体の解析を進めている。この様な中で、川崎病炎症反応に関わるサイトカインとして従来より解析しているIL-2の炎症反応や制御性T細胞を介する免疫抑制について解析を進め、一定の結果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍によりコホート研究は困難な状況であるので、現在手持ちのサンプルを中心に解析を行う。一方、川崎病の炎症反応に、既にIVIG療法に不応答な遺伝子多型として同定したIL-4レセプターと、炎症反応を促進しているサイトカインの1つとしてIL-2の関与が考えられる。IL-4レセプターとIL-2レセプターはシグナル伝達においてJak3キナーゼを共に利用している。我々はIL-2レセプターの種々の抗体やIL-2レセプターとJak3キナーゼとの会合条件などの情報を持っていることから、IL-2レセプターの細胞内動体を解析する。即ち、この2つのレセプターは同様の細胞内動体やシグナル伝達系を有している。従って、IL-2レセプターのシグナル伝達や動体の解析は、IL-4レセプターの解析につながるばかりでなく、川崎病における炎症反応の亢進予防にも重要な情報をもたらす。特にIL-2レセプターの細胞内動体とIL-2シグナル伝達の詳細な関係は不明な点が多く解析により新たな知見が得られると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品の納品日が次年度となったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は4月に納品予定の物品購入に使用する。令和4年度請求額は当初の予定通り、消耗品費等として使用する計画である。
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