研究課題/領域番号 |
20K08205
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
江藤 みちる (伊田みちる) 三重大学, 医学系研究科, 助教 (80393148)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉症 / ラット / 嗅覚 |
研究実績の概要 |
自閉症は、コミュニケーション障害・社会性の障害・常同行動といった中核症状のほかに、感覚過敏など感覚処理の問題がしばしば合併するが、感覚障害の病態解明はほとんどなされていない。本研究では、自閉症モデルラットを用いて嗅覚神経系の異常と嗅覚刺激に対する細胞応答を明らかにすることで、ヒト自閉症における嗅覚過敏の病態解明と自閉症児のQOL向上を目指す。本年度は、自閉症モデルラットの嗅覚中枢神経系について、嗅覚刺激に対する嗅覚神経系の生理的・形態学的解析を中心に研究を行った。 (1)新生仔ラットにおける嗅覚系行動実験(Nest-seeking):生後10日のラットは視覚・聴覚能力は未発達だが嗅覚能力は既に獲得し、匂いをかぎ分けて自分の巣へ移動する(Nest-seeking)。この性質を利用して生後10日でNest-seeking testを行った。その結果、自閉症モデルラットは自分の巣に到達するまでの時間が短く、かつ正しく自分の巣を選ぶ傾向があった。したがって、嗅覚に対する感受性が高い傾向が示唆された。体重には自閉症モデルラットと対照群で差は見られなかった。 (2)成獣ラットにおける嗅覚刺激に対する中枢嗅覚神経系の解析準備:ラットに匂い物質を提示して中枢嗅覚神経系における神経細胞の活動を解析するため、匂い物質を提示する実験系のセットアップおよび形態学的解析の予備実験を行った。具体的には、匂い物質の選定、提示方法、解析する脳領域の検討と、神経活動マーカーであるc-fosを用いた免疫組織化学での予備実験を行い、嗅覚関連領域におけるc-fosの発現を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染症拡大によるオンライン教育のために、当初の予定よりも研究のエフォートを減らさざるを得なかった。また、研究協力者として予定した学部学生が研究室に来れなくなったために、成獣ラットを用いた形態学的研究が遅れている。 新生仔の嗅覚行動実験については新しい知見を得ることができ、匂い物質を提示する実験系のセットアップは予備実験を行いつつ改良を重ねてようやく本実験が始められる準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
匂い物質を提示する実験系のセットアップが整ったので、神経細胞の反応について解析を本格的に始める予定である。現在は学部学生も研究に参加できるようになったため、形態学的な解析もあわせて行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症拡大のために研究へのエフォートを減らさざるを得ず自分自身の実験が遅れた。研究協力者として予定した学部学生が一時的に研究室に来れなくなり実験が遅れた。現在は研究室にきて実験することができており、今後は遅れた分も含めて研究を進めていく。
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