研究課題/領域番号 |
20K08207
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
城戸 淳 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (70721215)
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研究分担者 |
梶原 隆太郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 助教 (00738221)
沼川 忠広 熊本大学, 発生医学研究所, 特定事業研究員 (40425690)
小高 陽樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (40831243)
松本 志郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (70467992)
曽我 美南 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (80768002)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経型ゴーシェ病 / プレシナプス機能 / ポストシナプス機能 / 酸化ストレス / オートファジー |
研究実績の概要 |
令和2年度は、神経型ゴーシェ病患者由来のiPS細胞から樹立した神経前駆細胞(NPC)を使用しての薬剤スクリーニングで有効であると考えられた化合物Aの効果について評価した。Fluo 4-AMを用いた解析により、神経型ゴーシェ病患者由来NPCから分化させた神経細胞において、カルシウムイオンの流入が正常者NPC由来の神経細胞よりも亢進していることが以前からの研究により判明している。令和2年度は、化合物Aの添加により神経型ゴーシェ病の患者由来NPCから分化させた神経細胞では、このカルシウムイオンの流入(ポストシナプス機能)が改善されることを確認できた。また、神経型ゴーシェ病患者NPC由来神経細胞では、開口放出能が低下していることが予測される。シナプス前終末の機能や分泌現象の計測に活用されているFM1-43を使用して、実際に開口放出能が神経型ゴーシェ病患者NPC由来神経細胞で低下していることもすでに確認でき、さらに化合物A添加により、神経型ゴーシェ病患者NPC由来神経細胞のプレシナプス機能も改善した。また、この化合物A添加は、酸化ストレス負荷(過酸化水素添加)時における神経細胞死を、神経型ゴーシェ病患者NPC由来神経細胞において特に改善させた。ゴーシェ病の責任酵素であるグルコセレブロシダーゼは、化合物A添加においては、ゴーシェ病患者NPC内のグルコセレブロシダーゼ活性が上がらなかった。したがって、この化合物Aの効果として、シャペロン効果は否定された。神経型ゴーシェ病患者NPC由来の神経細胞では、もともと健常者NPC由来の神経細胞よりも亢進しているオートファジー機能が、化合物A添加により、さらに亢進していることも確認した。神経型ゴーシェ病モデルマウスを随時繁殖させ、神経型ゴーシェ病の病態について、検討し、化合物Aが神経型ゴーシェ病モデルマウスに対しても有効であるかを計画中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経型ゴーシェ病モデルマウスを随時繁殖させているが、思うように神経型ゴーシェ病モデルマウスが生まれないため、うまく解析できるマウスを確保することに苦労している。また、少数であるが、神経型ゴーシェ病モデルマウスに化合物Aを腹腔内に投与した。延命効果ははっきりとは認めなかった。このように、神経型ゴーシェ病モデルマウスの研究がうまく進んでいないために、予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroにおいては、化合物Aによって神経型ゴーシェ病患者NPC由来の神経細胞における効果が徐々にわかってきた。化合物Aの効果は、神経型ゴーシェ病患者神経細胞におけるグルコシルスフィンゴシンの含有量を減らすことに起因していると考えられるが、今後もまだ解析していない機序および機能について評価を進めていく。また、神経型ゴーシェ病モデルマウスにおける化合物Aの効果(寿命の延長)が、今のところはっきりとは出ていないので、神経型ゴーシェ病モデルマウスの脳内のグルコシルスフィンゴシンを定量するなどの別の有意差の出る解析システムを構築する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルス感染症が蔓延していたため、国内及び海外のあらゆる学会開催が中止になった。そのため、当初予定していた学会参加に費やす費用を使用しなかった。今年度に使用しなかった研究費は、次年度では、学会参加や培養液の購入費用として使用させていただく予定である。
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