研究課題/領域番号 |
20K08208
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
是松 聖悟 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60264347)
|
研究分担者 |
三浦 克志 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00327925)
藤澤 隆夫 独立行政法人国立病院機構三重病院(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構三重病院, 名誉院長 (20511140)
宮田 一平 川崎医科大学, 医学部, 講師 (20600969)
岡田 賢司 福岡看護大学, 看護学部, 教授 (80224012)
尾内 一信 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80351899) [辞退]
長谷川 俊史 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90314806)
佐藤 泰憲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (90536723)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 気管支喘息 / COVID-19 / RSウイルス / ライノウイルス / エンテロウイルスD68 / 人工呼吸管理 |
研究実績の概要 |
小児の気管支喘息は呼吸器感染症により急性増悪を来す。本研究班では全国定点施設からリアルタイムに小児喘息発作入院をWeb入力し公表している。その調査のコロナ禍に入ってからの状況を報告する。 全国33定点施設における2010-2019年度の基礎データをもととし、2020-2022年度の特徴を検討した。 2010-2019年度の急性増悪での入院は中央値3,524名、人工呼吸管理は80.5名であったが、2020、2021、2022年度はそれぞれ入院が820、1,001、945名、人工呼吸管理は20、40、26名と減少していた。入院例のうちSARS-CoV-2は2021年度2月より検出されはじめたが、2023年3月までに検査した2,095名中36名のみが陽性であり、この36名全員が人工呼吸管理を受けてはいなかった。入院例の31%から何らかの病原体が検出され、検出例のうち多かったものはライノウイルス/エンテロウイルスが41%、RSウイルスが27%、アデノウイルスが7%、ヒトメタニューモウイルスが6%、パラインフルエンザウイルスが5%であった。 2020-2022年度の入院例の重症度は初発が671名、間欠型が808名、軽症持続型が501名、中等症持続型が443名、重症持続型が153名、最重症持続型が23名、詳細不明が167名であったが、軽症持続型の32%、中等症持続型の22%、重症持続型の5%は長期管理薬が投与されていなかった。 SARS-CoV-2が気管支喘息の急性増悪を惹起する結果は得られず、むしろこの期間の入院例は減っていた。しかし長期管理が必要とされている重症度にもかかわらずなされていない例の入院は軽視できず、保護者や医療者への啓発が必要と考えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国33定点施設からリアルタイムで喘息発作入院の情報を入力していただき、重症例の病原体検索を多項目PCRで検査している小児喘息発作入院サーベイランスはWebサイトで国民にも公表している。この研究にて、COVID-19が気管支喘息を悪化させないことを疫学的に証明することができた。これは共同通信社から全国に発信され、約30の全国地方紙に掲載された。 また今年度から埼玉医科大学総合医療センターでも病原体検索を開始したが、順調に検査ができるようになった。 この知見は世界に既報がなく、2022年度は日本小児アレルギー学会学術集会での優秀演題賞を受賞し、また韓国喘息アレルギー学会での発表の推薦を受けた(2021年度は日本アレルギー学会関東地方会、日本小児アレルギー学会学術集会でも優秀演題賞を受賞している)。現在、英論文を作成中である。
|
今後の研究の推進方策 |
COVID-19は気管支喘息を悪化させないことは本研究で証明され、共同通信社より全国に発信され、また現在、英論文を作成中である。 COVID-19の扱いが5類感染症に引き下げられ、行動の制限がなくなることでこれまでの感染症が再び流行することが予想され、さらにCOVID-19のような新興感染症が生じる可能性がある。 その際、その感染症が気管支喘息発作が増悪させるものかを引き続き全国でモニタリングし、喘息発作が急増した場合に、その原因となる病原体が何かを検査していく予定である。2022年度から開始した埼玉医科大学総合医療センターでの病原体検索も順調に稼働し始めたため、2023年度は検査件数を増やす予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で喘息発作入院が減っていることを証明したことは世界に発信すべき大きな成果である。しかしそのために病原体検査をする例が減り、そこで予算に余りが生じた。5類感染症に引き下げられ行動の制限がなくなることで、コロナ禍前の感染症の流行や新興感染症の流行が予測されており、また、2022年度に新規に開始した埼玉医科大学総合医療センターでの病原体検索も順調に稼働し始めたため、2023年度は全国定点33施設からの検体受け入れも可能となった。そのため、2023年度に繰り越す必要があった。
|
備考 |
本研究の小児喘息発作入院サーベイランスはWebページで国民に公表されており、かつその成果は共同通信社から全国に発信された。
|