研究課題/領域番号 |
20K08214
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
中江 淳 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (00344573)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肥満 / エネルギー消費 / 皮下脂肪組織 / ベージュ脂肪細胞 / 褐色脂肪細胞 / Th2リンパ球 / Foxo / Ccl22 |
研究実績の概要 |
肥満発症におけるエネルギー消費量の調節メカニズムを、Tリンパ球の機能調節に着目して研究を行った。申請者は、CD4陽性Tリンパ球特異的に、Foxo1をノックアウト、さらにFoxo3をヘテロノックアウトし、Tリンパ球でのFoxoファミリー転写因子の量を正常の25%に減少させたマウス(T-Quarter KO; T-QKO)を作製した。T-QKOの酸素消費量が有意に増加し、高脂肪食負荷でも抗肥満を示し、皮下脂肪組織、褐色脂肪組織におけるTh2サイトカイン、Th2リンパ球特異マーカー遺伝子発現が有意に増加していることから、本研究ではそのメカニズムを解析することに主眼を置いた。 当該年度は、(1)T-QKOの脾臓・末梢血・褐色脂肪組織・白色脂肪組織でのTリンパ球サブセットの変化をFACS解析により明らかにし、(2)Th2リンパ球分画を単離し、遺伝子発現解析を行い、FoxoファミリーのCD4陽性Tリンパ球での遺伝子発現調節メカニズムについて検討を加えた。 その結果、T-QKOの脾臓・末梢血でのTリンパ球サブセットは、Th2リンパ球は有意に低下していた。それに対し、T-QKOの皮下脂肪組織では、Th2リンパ球は有意に増加していた。それを、裏付けるように、皮下脂肪組織、褐色脂肪組織全体での遺伝子発現解析では、Th2リンパ球のマーカー遺伝子であるインターロイキン4(Il4)および13(Il13)の発現は有意に増加していた。さらに脾臓よりTh2リンパ球分画(CD4+CXCR3-CCR6-)を単離し、Th2リンパ球特異的転写因子であるGata3、Il4、Il13遺伝子発現の検討を行ったところ、Gata3遺伝子発現が有意に増加していた。以上のことから、Foxoファミリー遺伝子量の低下により、Gata3遺伝子発現が増加し、Th2リンパ球サブセットの増加に寄与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究により、実際にT-QKOの皮下脂肪組織に、Th2リンパ球の浸潤が増加し、さらに、Foxoファミリー遺伝子量を低下させることにより、CD4陽性Tリンパ球をTh2リンパ球に分化させる方向に向かわせるGata3遺伝子発現が有意に増加させることを明らかにした。しかしながら、末梢血、脾臓では逆にTh2リンパ球サブセットは有意に低下している。仮説として、Th2リンパ球サブセットが皮下脂肪組織特異的にリクルートさせるメカニズムがある可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究結果より、皮下脂肪組織特異的なTh2リンパ球のリクルートメカニズムを明らかにすることが、重要であると考えられた。次年度は、リンパ球を含めた免疫細胞の組織特異的な浸潤に重要であると考えられているケモカイン-ケモカイン受容体システムに着目する。方法の一つとしてT-QKOの皮下脂肪組織より単離したTh2リンパ球でのケモカイン受容体遺伝子の発現解析を行い、T-QKO特異的に変化しているケモカイン受容体遺伝子を同定する。同定された場合、そのリガンドとなる候補遺伝子の発現を、C57Bl6Jコントロールマウスの皮下脂肪組織、内臓脂肪組織、および褐色脂肪組織を用い、普通食、高脂肪食負荷で比較し、さらに、寒冷刺激飼育下でも発現変化を比較する。この解析により、T-QKOの皮下脂肪組織へのTh2リンパ球のリクルートメカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては、COVID19感染下において、研究施設の立入制限等による研究日数の低下に伴う消耗品購入量の低下、および学術総会のWeb開催により、旅費等の支出の低下により、次年度使用額が生じたと考えられる。次年度は、当該研究から得られた成果をもとに遺伝子改変マウスの作製を予定しており、当該年度の予算を使用する予定である。
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