これまでの研究で、CD4陽性Tリンパ球特異的に、Foxoファミリー転写因子の量を正常の25%に減少させたマウス(T-Quarter KO; T-QKO)では、皮下脂肪組織でのベージュ細胞化が促進し、エネルギー消費を増加させ、抗肥満効果をあらわすことを明らかにした。そのメカニズムとして、Foxoファミリー遺伝子量の低下により、Gata3遺伝子、Ccr4遺伝子発現が増加し、Th2リンパ球サブセットの増加に寄与していることが主な原因であることを明らかにした。その際、この変異CD4陽性リンパ球が寒冷刺激下で、特異的に皮下脂肪組織にリクルートされることを見出した。そのメカニズムとして、これまでベージュ化に関与していることが知られていなかったケモカインCcl22が、寒冷刺激により皮下脂肪組織に特異的に発現することが原因であると考えられた。最終年度では、寒冷刺激下での皮下脂肪組織でのCcl22遺伝子の経時的な発現パターンを、これまで知られているベージュ化関連遺伝子の発現パターンと比較し、さらに、免疫染色によりCcl22発現細胞の同定を行った。その結果、Ccl22遺伝子は寒冷刺激下で、皮下脂肪組織特異的に発現し、Th2リンパ球関連遺伝子、インターロイキン4および13遺伝子発現と同期し、その発現変化は、既報のM2マクロファージ、好酸球、Innate lymphoid cell (ILC)2関連遺伝子を凌ぐものであった。また、蛍光免疫染色により、Ccl22がM2マクロファージのマーカーであるCD206発現細胞とマージしたことから、皮下脂肪組織においてCcl22が、CD206陽性M2マクロファージより産生されることが示唆された。今後は、Ccl22の生理学的作用についての検討を行い、寒冷刺激下での脂肪細胞のベージュ化の鍵分子としての可能性について検討を加える。
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