研究課題/領域番号 |
20K08217
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
水野 克己 昭和大学, 医学部, 教授 (80241032)
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研究分担者 |
幸田 力 昭和大学, 医学部, 准教授 (10365752)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電子レンジ / サイトメガロウイルス / 温度変化 |
研究実績の概要 |
これまでに冷蔵母乳100mlを電子レンジ500Wで40秒間の熱処理により経母乳サイトメガロウイルス(CMV)感染を予防することをin vitro実験にて示してきた。また、同様の電子レンジ加温処理前後で母乳成分(分泌型IgA抗体、ラクトフェリン、TGFなど)変化を検討し、有意な低下がないことも報告した。 CMVIgG陽性の母親の母乳はCMV感染性がある。本研究では、実際に、NICU入院中の児の母親がCMVIgG陽性であった場合、この母乳を電子レンジ加温処理することにより、超早産児の経母乳CMV感染症を予防できるのかを臨床試験で検証することを目的としている。試験に移す前に以下の基礎実験を行った:1)電子レンジ加温処理に伴う温度ムラの程度、異なる容器における温度変化の再現性、2)臨床では少量の母乳を与える場合も多いため、少量の冷蔵母乳を100mlの母乳と同等に電子レンジ加温処理を行う方法の検証。 結果:1)100mlの冷蔵母乳を500W 40秒間の加温処理を行ったところ表面のほうが底面より温度上昇は大きいことがわかったが、その温度変化の差は5.5℃であり臨床的に問題となるような温度ムラはなかった。容器の11か所で温度変化を測定したが、臨床的に火傷に結び付くhot spotを形成するようなことはなかった。容器間の差も有意ではなかった。2)少量の冷蔵母乳を100mlと同等に加温処理するための実験:25mlの母乳保存袋に20mlの冷蔵母乳を入れ密閉し、80mlの冷蔵水に付けて加温したところ、100ml冷蔵母乳の加温処理と同等の温度変化が得られた。これらの結果より、500W 40秒間の電子レンジ加温では、臨床的に問題となる温度ムラを生じることがないこと、そして、少量の冷蔵母乳を加熱処理することができることがわかった。令和3年度にはこれら基礎データをもとに臨床試験を行う予定である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年4月に新型コロナウイルス感染パンデミックに対して緊急事態宣言は発出され、病院での面会も極度に制限されるようになった。現時点でも片親のみ1時間限定となっており、面会は児のケアで終わってしまい、研究に関する説明を行う時間的な余裕がなくなっている。また、共同研究者の幸田が新型コロナウイルスに罹患し、長期入院を余儀なくされたこともあって、サイトメガロウイルスPCR・細胞感染実験の準備が進んでいない。 令和3年度も東京の新型コロナウイルス感染者は減少しておらず、面会制限も厳しい状況が続いており、母親の不安も強いため、RCTの開始は感染状況がもう少し改善してからの方がよいかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスワクチン接種が広がり、面会制限も多少でも緩和されるまでは、基礎実験がメインになるかもしれないと考えている。現時点では、CMVIgG陽性母乳を電子レンジ加温処理をしたものとしていないものとでPCR検査、ならびに細胞感染実験を行うことにしている。 遅くとも令和3年度下半期にはRCTを始められるよう、説明文書の簡略化・イラスト添付などにより面会制限状況においても臨床試験が開始できるよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染パンデミックの影響があり、実際にPCR・細胞感染実験を担当する共同研究者の幸田が新型コロナウイルスに感染し、長期間の入院生活となった。また、病院の感染予防体制も強化され、原則、入院中の面会はできない(NICUでは母親が産科入院中は1時間まで容認)など臨床試験を行うことが極めて難しい状況となった。令和3年度も上半期は同様の状況が予測されるが、その間は幸田と基礎研究を行う予定である。遅くとも、下半期には臨床試験ができるよう準備を進める。具体的には、説明文書以外にイラストをいれたパンフレットを作成し、産科施設入院中に読んでもらうようにする。
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